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「歯医者=怖い」は昔のイメージ?? 家族そろってむし歯予防について考えるきっかけに

「歯医者=怖い」は昔のイメージ?? 家族そろってむし歯予防について考えるきっかけに
「歯医者=怖い」は昔のイメージ?? 家族そろってむし歯予防について考えるきっかけに
歯科医師であり、現代美術作家でもある長縄拓哉先生が各業界の第一線で活躍するクリエイターとともに歯の健康について考える当企画。3回目のゲストは絵本や舞台美術、雑貨制作など様々な分野で活躍するアート制作ユニット「tupera tupera」の亀山達矢さんと中川敦子さんです。
「デンタルマガジン191号(2024年12月1日発行)」で採録できなかったこぼれ話やtupera tuperaのお二人の歯磨きライフについて伺いました。


tupera tupera 亀山 達矢氏 / 歯科医師・現代美術作家 長縄 拓哉先生 / tupera tupera 中川 敦子氏


本取材は、京都市北区にあるtupera tuperaさんのアトリエにて開催されました。

<tupera tupera(ツペラ ツペラ)さんプロフィール>

亀山達矢氏と中川敦子氏によるユニット。2002年より活動を開始する。 絵本やイラストレーションをはじめ、工作、ワークショップ、アートディレクションなど、様々な分野で幅広く活動している。 絵本など、著書多数。海外でも様々な国で翻訳出版されている。NHK Eテレの工作番組「ノージーのひらめき工房」のアートディレクションも担当。
武蔵野美術大学油絵学科グラフィックアーツ専攻 客員教授、大阪樟蔭女子大学 客員教授、京都芸術大学 こども芸術学科 客員教授。
『わくせいキャベジ動物図鑑』(アリス館)で第23回日本絵本賞大賞を受賞。2019年に第1回やなせたかし文化賞大賞を受賞。

<長縄 拓哉(ながなわ たくや)先生プロフィール>

1982年愛知県生まれの歯科医師(医学博士)であり現代美術作家。2007年東京歯科大学卒業後、東京女子医科大学病院、デンマーク・オーフス大学での口腔顔面領域の難治性疼痛(OFP)研究を経て、口腔顔面領域の感覚検査器を開発。IADR(ボストン、2015)ニューロサイエンスアワードを受賞。デジタルハリウッド大学大学院在学中。現代美術の特性を応用し、医療や健康に無関心な人々や小児のヘルスリテラシーを向上させ疾病予防をめざす。

自分たちが自分たちが面白いと思ってつくったものが誰かに届いて、 何かを起こすきっかけになったりすると喜びを感じます。

長縄:tupera tuperaさんの作品はいつも親子で楽しませていただいています。特に7歳になる息子は移動時間中も夢中になってお二人の絵本を読んでくれるので助かっています。もともと活動はどのようにして始まったのでしょうか。 亀山:最初は手づくり雑貨のブランドとして展示販売などをしていました。そのうち自分たち二人組の屋号が必要だよねということになり、「tupera tupera」を名乗るようになったんです。その後、絵本もつくるようになりました。 長縄:たしかtupera tuperaさんの最初の絵本作品は『木がずらり』ですよね。これは一冊が蛇腹状になっていて、広げると14本の木が春夏秋冬でずらりと並んで描かれています。造本の仕様も含めて発想が面白いなと思いました。 tupera tuperaさんの記念すべき最初の絵本作品『木がずらり』。色とりどりの紙のコラージュで美しく描かれた、読んで飾れるジャバラ絵本。 中川:並木道を散歩しているみたいな気持ちで眺められて、飾って楽しむことができる絵本を目指しました。絵本はキャパシティが広いというか、物語性があるものから科学的なもの、アートブック的なものまで、いろいろなことを試せる奥深い分野だと感じています。 長縄:他では見たことがないような絵本をたくさん制作されていますよね。世界中で翻訳されている『しろくまのパンツ』は、帯が赤いパンツになっていて、読むためにはこのパンツを脱がさないとならない。中も穴あきのしかけがあって、それが次のページに描かれたパンツとリンクしていて、ページをめくるたびに楽しさがあります。 亀山:あれは絵本にパンツを履かせたいという発想から始まったんです。僕らの仕事って、つまらないようなものも、面白くすること…。近年の例で言えば、コロナ禍の影響でお父さんが毎日家にいるようになって、家族から嫌がられた(笑)。これはお父さんたちのためになんとかしないといかんと思って、『パパパネル』という全世界のパパを主役にしたパネル型の絵本をつくりました。遊び方は簡単で、顔が描かれたパネルをパパが顔にはめて、「パパ〜」といって、パネルをひっくり返し「パイナップル!」と叫ぶ。パパの顔が瞬時にパイナップルに。これで子どもたちはどんどんお父さんが好きになります(笑)。 中川:パイナップル以外にも、パンダとかパンツとか、パのつくパネルが10枚はいってるんですよ。 tupera tuperaさんの大ファンという長縄先生のお子さんも『パパパネル』に大はしゃぎ。 長縄:このようなアイデアはどのようにして生まれるのでしょうか? 亀山:『石川岩五郎』という作品があるのですが、キャラクター設定があって、「つよい意志を もっていて かたい表情してるけど おなかの石が 動いたら 痛くてゴロゴロ転がるよ」。お腹に胆石があるんです(笑)。 長縄:歯科医師としては気になる話です(笑)。 亀山:医療とはまったく関係ない話です(笑)。 中川:単に石だから(笑)。 亀山:この作品は石を石と見ないで、「これは眉毛みたい」「これは歯になるな」と拾った石を並べただけで画材を使っていません。石を並べただけで、顔に見えるし、石川岩五郎というキャラクターがあらわれる。例えば、スーパーの野菜売り場に行くと、同じナスでもいろいろな形があるじゃないですか。「あ、このナスは鯨みたいだな」とか、そんなふうに物を何かに見立てて楽しむということを昔からやっています。 アトリエの壁面には、実際に絵本に使われた作品や読者からのメッセージなどが所狭しと貼られていた。 長縄:そうした「楽しむ感覚」が、お二人の作品からは伝わってくるように思います。僕の場合、「どうして歯科医師なのに絵を描くのか」と言われることがあります。もともと作品のコンテクストに医療情報を含むことで、人々のヘルスリテラシーを向上させたいという思いがあるんです。でも、最近は作品にメッセージを込めることにそこまでこだわりがなくなってきました。すると今度は作家として作品が売れたら成功なのか、展示会が話題になったら成功なのか、何が成功なのだろうかと考えるようになりました。お二人にとって成功とは何を指すのでしょうか? 亀山:活動初期から何かを作ったら発表するということを続けてきて、最近では全国を巡回するような大型の展覧会やイベントも増えました。振り返ると、どれも思い出深くて、次につながる大事な機会になっていたと感じます。今年の夏、4年間かけて全国を巡回した展覧会「tupera tuperaのかおてん.」がフィナーレを迎えました。観に行った方たちの「家で顔をつくる遊びが止まらない!」「町の中で何でも顔に見えてしまう」という声をSNSで見かけると、自分たちが面白いと思ってつくったものが誰かに届いて、その人の生活に笑顔を増やしたり、何か行動を起こすきっかけになったりしたんだなと思い、喜びを感じます。売り上げや販売実績という部分では、僕たちはアーティストなので、そこで判断することはありません。でも、何かをつくり、届けるためには多くの人が関わり、資金も必要になってくるので、金銭的にもプラスになることは、関わった人や会社にとっても喜ばしく、それが次につながる力にもなるので大事なことだと思います。自分たちにとっても、関わった人たちにとっても、観てくれた人たちにとっても、次につながっていく結果になれば、成功と言えるのかもしれません。

日頃から小さな「いいね」を共有するのは大事

長縄:仕事の役割分担はどうされていますか? 中川:私たちの場合は、文章もお互いに行ったり来たりして書き直し合っていますし、絵についても2人でアイデアを出して、お互いに面白いと思うものを描き合ったり、つくりたいページをつくりたい方がつくったりしています。バリエーションで見せるものが多いことも関係しているのだと思いますが、役割分担がないことが私たちの特徴でもあります。 長縄:歯科医院は夫婦や親子で開業しているケースが多くあるのですが、家族と仕事をすると、つい喧嘩をしてしまうという話を耳にします。ご夫婦で仕事をするコツはありますか? 亀山:熱量が高い30代前半まではぶつかることも多かったのですが(笑)、それが過ぎると落ち着いていくというか。でも、今でもくだらないことで喧嘩はしますよ。 中川:小さい喧嘩はありますね。コツというようなことでもないけれど、楽しいこととか美味しいご飯とか、これはいいねと思うこととか、共有しているものが多いほど、信頼関係は深まるのかなと思います。だからといって、何もかも同じで完全にリンクしちゃうと面白くないんですけど、大まかな価値観は一緒だよね、ということを分かり合っていると安心します。だから、日頃から小さな「いいね」を共有するのは大事かなと思います。 亀山:僕の亡くなったじいちゃんが結婚式で「夫婦円満の秘訣を言います」って。なんだろうと思ったら「夫婦は同じものを食べなさい」と。僕らは主に自宅で作業をしてるので、朝昼晩と基本的には食べるものは一緒。同じ成分で出来上がっていくので(笑)、シンクロ率は高まっていくような気はします。 取材中、お二人がどちらからともなく、ハサミや鉛筆を使って即興で作品づくりを披露してくださった。

年齢的に健康について考えなきゃいけないなと思っています

長縄:お気に入りの歯磨きグッズはありますか? 中川:特にこれと決めているモノはないです。 亀山:僕は「ソニッケアー」という電動歯ブラシを使っています。使うようになったきっかけは、楽しそうだから。 中川:本当?それだけの理由で使ってるの? 亀山:実際、手磨きよりもテンションが上がります(笑)。もっと楽しいグッズがあれば、そっちに変えちゃいます(笑)。 長縄:でも、テンションが上がるグッズというのは大事だと思います。歯磨きをしっかり行うアイデアはありますか? 亀山:すぐに洗面所から離れるといいです。テレビの前に行くとか、ちょっと庭に出てみるとか。そうすると時間をかけてしっかり磨くようになります。 長縄:電動歯ブラシは数分で口全体が磨けるように設計されている製品が多いです。手磨きの場合も、しっかり磨くためには3分以上磨いたほうがいいと言われているので、いいアイデアだと思います。歯磨きに関しては、多くの親御さんがお子さんの歯磨きで悩まれていますが、仕上げ磨きなど、苦労されたことはありますか? 中川:苦労した覚えもないけど、ちゃんとできた覚えもない(笑)。 長縄:我が家の場合は、パパが歯医者さんだから自分でまったく磨かないんです。上手に磨いてくれる人がいるから、「お願いします」みたいな(笑)。 中川:大人も子どもも歯磨きの仕方は一緒でいいんですか? 歳を重ねると、歯よりも歯ぐきの衰えのほうが気になったりもします。 長縄:大人も子どもも二大疾患がむし歯と歯周病なので基本的には一緒です。子どもでも口の中がいつも汚れていると歯肉炎や歯周病になる可能性があって、子どもにとっても歯ぐきの健康は大事なんです。 亀山:食後のデザートはご飯のあとにすぐ食べたほうがいいんですよね? 長縄:そうですね。ご飯を食べると口の中が…。 亀山:酸性に変わっちゃう。 長縄:そうです。酸性の状態が続くと歯が溶けてむし歯になります。だから、食後のデザートはなるべくご飯から間を空けずに食べたほうがいいんです。間食のおやつも、ダラダラと食べるのではなく、食べる時間を決めたほうがいいですね。 中川:歯医者さんに行くタイミングは、いつがいいのでしょうか? 痛くなったら行く、というのは普通だと思いますが。 長縄:受診のタイミングは3か月に1回とよく言われていますが、半年に1回でもいいと思います。ただ、痛くなってから行くのはよくないです。 中川:時間がある時に行こうと思っても、なかなか難しくて…。 長縄:美容室に行くみたいな感覚で定期的に健診に行くのがいいと思います。実は、そういう感覚で受診できる医療機関って歯科医院だけなんです。お医者さんに「身体に悪いところはないけど、来ました」と言っても、「何しに来たの?」となってしまう。でも、歯科医院は歯周病の検査をしたり、歯石を取ったり、必ずやることがあります。 中川:私たちの時代は子どもの「三大怖い」くらい歯医者さんって怖いイメージがありました。でも、うちの子どもたちは歯医者さんを怖がっていなくて、特に上の娘は歯医者さんが好きだと言うんです。 長縄:今は麻酔薬を歯ぐきに塗って表面麻酔をしてから注射を打ちますし、注射器の針も細くなっているので、昔ほど痛くないかもしれないですね。 亀山&中川:私たちが子どもの頃は歯医者が恐怖でしかなかった(笑)。 長縄:今は、多くの歯科医院がお子さんを怖がらせない工夫をこらしています。ですから、小さいうちから歯科医院に通う習慣を身につけていただきたいと思っています。そして、歯科医師としてお伝えしたいことは、むし歯は予防ができるということ。基本は歯磨きですが、むし歯予防にはフッ素が重要なので、フッ素入りの歯磨き粉を使った歯磨きをお勧めしています。最近の研究ではむし歯や歯周病が脳梗塞や糖尿病など全身の病気と関係があることが分かってきています。病気予防のためにも、フッ素入りの歯磨き粉を使った歯磨きと定期的な健診をお勧めします。 亀山:年齢的に健康については考えなきゃいけないなと思っています。 中川:健康は大事ですよね。しっかりした自分の歯で、いつまでも美味しく食事ができるよう、ケアしていきたいです。 長縄:先ほど、作品の中に「胆石」という言葉が出てきましたが、制作時にその意図はなかったとしても、医療に関するキーワードに触れることが健康について考えるきっかけになるという研究があります。tupera tuperaさんのファンには子育て中の方も多いと思いますので、今回のインタビューをきっかけにご家族そろってむし歯予防について考える時間をつくっていただけると歯科医師としては嬉しく思います。本日はありがとうございました。 亀山&中川:ありがとうございました。 今回も長縄先生自作の絵をプレゼント。今回のテーマはtupera tuperaさんの人気作品『やさいさん』にちなんで、野菜をモチーフに取り入れた「にんじんむすめ」。 インタビュイー 亀山 達矢・中川 敦子(tupera tupera)/ 長縄 拓哉(歯科医師・現在美術作家)

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