皆様こんにちは、柏井伸子です。 前回は適切な洗剤を選択し、ハンドピース(以下HP)を適切に処理するためのイントロダクションをお伝えしましたが、今回は実際に使用済みのHPの処理方法について考えていきます。 復習になりますが、事前のチェックポイントとしては、 ①内部洗浄の可否(ウオッシャブルマーク:WMの有無)の確認 ②超音波洗浄は不可 という点です。 用意するものは、タンパク質分解酵素入り洗剤・歯ブラシ・歯間ブラシ・ペーパータオル・エアー缶(キーボードのほこり取りなどで使用されるもの)・厚手のグローブやマスクやゴーグルなどの個人防護具です。 WMの有無に関わらず、全体の作業の流れとしては、「①洗浄、②乾燥、③注油、④油切り、⑤包装、⑥滅菌、⑦保管」となりますが、消毒コーナーでの処理の前に、チェアサイドでの対処も重要です。 医療用具に付着する汚染物には多量の水分が含まれていますが、汚染発生から時間の経過とともに水分が蒸発し、器具に固着して落としにくくなってしまいます。 治療中もしくは片づけの際にチェアサイドでアルコールなどの消毒薬ではなく水道水やRO水で湿らせたティッシュペーパーやガーゼ等で大まかな汚れを拭き取っておくことで、消毒コーナーで容易に洗浄することができます。 RO水とは、水道水を超微細孔のフィルター(Reverse Osmosis逆浸透膜)でろ過した水です。 また、注油後のオイル切りは余剰オイルの逆流によるモーターのオイル焼けを防ぐためにも重要です。 HPをユニット本体に接続しヘッドを下向きにして1分間ほど回転させます。 では、実際にWMの有無による処理方法を考えてみましょう。 まずはWMがついていないHPの処理についてです。 これは内部に水分を浸透させることができないということですので、洗剤の中に浸漬することはできません。 つまり外側だけを洗うので、計量し希釈した洗剤を歯ブラシにつけて外側を洗い、バーやポイントが入る先端の穴は洗剤をつけた歯間ブラシを出し入れします。 洗浄後は流水で洗剤成分をすすぎ、ペーパータオルやエアーで乾燥して水分を除去します。 乾燥が不十分な状態で注油してしまうとオイルがはじかれて十分に浸透しなくなります。 注油には自動注油器やエアー缶のオイルを使用し、オイル切りを行ってから包装し滅菌します。 次回はWMのついているHPの適切な処理についてお伝えします。
著者柏井伸子
歯科衛生士
略歴
- 1979年 東京都歯科医師会付属歯科衛生士学校卒業
- 1988年 ブローネマルクシステム(歯科用インプラント)サージカルアシスタントコース修了
- 2003年 イギリス・ロンドンおよびスウェーデン・イエテボリにて4ヶ月間留学
- 2006年 日本口腔インプラント学会認定専門歯科衛生士取得/li>
- 日本医療機器学会認定第二種滅菌技士
- 2009年 日本歯科大学東京短期大学非常勤講師
- 2010年 上級救命技能認定
- 2011年 東北大学大学院歯学研究科修士課程口腔生物学講座卒業口腔科学修士
- 2013年 東北大学大学院歯学研究科博士課程口腔生物学講座入学
- 2015年 ミラノにて3か月間臨床研究
- 2016年 アメリカ心臓協会認定ヘルスケアプロバイダー
- 2017年 上記更新
- 2020年 WHO Confirmation of Participation Infection Prevention and Control (IPC) for Novel Coronavirus (COVID-19)修了
近著 「よくわかる 歯科医院の消毒滅菌管理マニュアル」 ~無駄なく無理なく導入できる現実的な実践法~ 書き込み式 歯科衛生士のための感染管理の基本 http://interaction-books-information.blogspot.com/2018/04/blog-post.html