アドラー心理学では、“わたしメッセージ(I messeage)”を使うと良好な関係になる。 ここでは“私は嬉しい”がキイ・ワードとなる。そう言えば、英語でも「はじめまして!!」は、Iam glad to see you!とかnice to meet you!を使う。
これも“わたしメッセージ”である。 でもどうして、英語ではこのような表現をするのか? 民族や文化の差なのか? さて、ヨーロッパでは、民族間の殺戮や征服の歴史が繰り返されてきた。 そのため”私はあなたの敵ではない。”と言うメッセージが重要なのだろう。 一方、わが国は海に囲まれた単一民族国家であり、異民族に征服された歴史がない。 同じ民族だから、“多分相手も同じことを考えているだろう”と思ってきた。 だから、“わたしメッセージ“を使う必要がなかったのだろう。 しかし、日本でも多様化が進んできた。 そのため、このような表現が必要になる時代に入ったのだろう。 わたしメッセージのキーワードは、“私は嬉しい”である。 次に、アイメッセージのさまざまな例をあげることにする。 まず、例題。 “初診で来られた時は、かなり齲蝕や歯周病が進行していた。 長期間にわたり治療をしてきたが、今回で終了である。 今後も定期的にメンテナンスを行いたい。” さて、どのようなアイメッセージを用いるだろう? あなたの意見:( ) 例えば 「一応治療は終了です。 今だから言えるのですが、初診で来られた時、かなり状態が悪かったので、どこまで良くなるだろう・・・と心配しておりました。 でも今日、始めて診せていただいた時に、こうなれば良いな・・とイメージしていた通りになりました。 この状態を維持するためにも、定期的に診せてください。お待ちしています。」
どうだろう?私メッセージの塊だ。 このように表現すると、患者さんはどの程度まで良くなったか把握できるし、 それを維持するためにも定期健診が重要であることが理解できる。 ところで最近、診療室では床矯正装置や、T4Kなどの機能的矯正装置を用いることが増えた。 しかし、これは患者さんが治すものだ。 装置を入れてくれないと効果がでない。 そこで、小児の協力を引き出すための言葉が必要となる。 ここでも“あなたメッセージ”と”わたしメッセージ”を比較してみよう。 装着時: “あなたメッセージ”:この装置を頑張って入れてね。 “わたしメッセージ”:この装置を入れてくれると、とっても嬉しいんだ! :どれだけきれいになるか、楽しみにしているから! :○○さんの良くなったところ見たいんだよ。 次回来院時: ”あなたメッセージ”:この装置を頑張って入れているね。 ”わたしメッセージ”:この装置を入れてくれて、ありがとう。 :苦労して作った装置を入れているから、先生はとっても嬉しいんだ。 :きれいになってきたから、嬉しいよ。どんどん良くなっていく様子を、楽しみにしているね。 このパターンは、歯周治療の経過や補綴物の装着時などにも応用できるだろう。 他の例もあげてみよう。 1:痛みが取れてよかったですね。ホッ!としました。 2:ちょっとお声が出たけれど頑張ったんだね。とってもうれしいよ! 3:6歳臼歯が、きれいに磨けるようになったんだね。とても進歩したよ! 4:よく噛めるようになって、良かったですね。私もうれしいです。 5:大きな口を開けてくれたから、とっても助かったよ! この章も最後までご覧いただきとっても嬉しいです。 続く
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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