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しくじり先生の小児歯科 その38 慢性齲蝕を作る その5 サフォライドRC

しくじり先生の小児歯科 その38 慢性齲蝕を作る その5 サフォライドRC
しくじり先生の小児歯科 その38 慢性齲蝕を作る その5 サフォライドRC
サフォライド(38%フッ化ジアミン銀)を象牙質に塗布すると、細管内では、蛋白銀形成による目詰まりと石灰化による封鎖が起こる。
これは象牙細管の色素浸透性の実験である。



まず同一歯牙に窩洞形成を行い、実験側にはフッ化ジアミン銀を、対象側には蒸留水を塗布する。
2週間静置後、窩洞側よりメチレンブルーを24時間浸透さる。
フッ化ジアミン銀を塗布した窩洞は、色素の侵入が抑制されている。
ここで象牙細管の狭窄・封鎖されていることがわかる。

これを根管治療に応用したのがサフォライドRCで、原液を10倍希釈した製品(3.8%フッ化ジアミン銀)である。



感染根管治療は、根管壁の清掃拡大が重要であるが、細菌や腐敗物質を除去することは不可能に近い。
さらに、乳歯は側枝が非常に多く、予後不良の原因となる。



そこでこれが製品された。(注1)
ちなみに原液2回とRC3回塗布で、象牙細管の封鎖効果は同程度とされる。

さて筆者は、通常の乳歯の齲蝕治療に10倍希釈の液を利用している。
開発者の故山賀禮一先生から、その方が軟化象牙質への浸透性が良いと言われた(私信)。
また、歯髄刺激性が低下するし、特有の苦味も薄まる。
筆者は、原液を希釈しているが、蒸留水が望ましいことは言うまでもない。
水道水には塩素が含まれ、塩化銀として沈殿する可能性がある。
しかし、塩素濃度が低いので問題ないと教えていただいた。
ただ、希釈して保存する場合は、遮光が必要となる。

さて、本剤は塗布すれば終わりとではない。
齲蝕の進行を遅らせることで、小児をより協力的にすることができる。
また、二次象牙質を作ることで、より簡単な修復治療が可能となる。
より効かせるためのテクニックがある。

先生は、まず齲蝕歯を形態修正について述べられた。
齲蝕は、エナメルを貫通した齲蝕は、エナメル象牙境に沿って広がる。
そこで、まずフリーエナメルを除去する。



そうすれば、薬剤が到達しやすい。
また、齲窩の細菌層が変化する可能性がある。
さらに、唾液の緩衝作用や再石灰化が期待できる。          

注:臨床症状の発現や細菌の発育阻止帯の研究から、根管貼薬に用いる濃度は3.8%とされた。

続く・・

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識 「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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