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「患者さんに伝えたい医科歯科連携のための食と栄養」第1回:はじめに

「患者さんに伝えたい医科歯科連携のための食と栄養」第1回:はじめに
「患者さんに伝えたい医科歯科連携のための食と栄養」第1回:はじめに
今回から6回にわたって連載を担当する、歯科医師の光永幸代と申します。

私は普段、がん専門病院の患者さんの口腔管理に従事しています。

(図1)神奈川県立がんセンター

院内外から「それって口腔ケアをしているの? 普通の歯科治療はしないの?」などとお尋ねいただくことがあるのですが、がん治療時の口腔関連合併症の予防や対策を目指した管理には歯科治療の理論や技術が不可欠です。治療内容には設備的な限界はありますが、「感染巣の制御」と「機能の維持・向上」という歯科治療の根本からは原則外れていません。もちろん患者さんの病状や治療内容に沿った制約があるので、短時間での判断力や臨機応変さも求められますし、それには治療方針自体への理解も必要ですので、多少はがん治療にも詳しくなりました。

そんな日常業務の中でもう1つ、院内NST(栄養サポートチーム)の活動にも従事しています。

(図2)院内NST活動の様子

NSTは栄養士だけでなく、医師、看護師、薬剤師、リハビリテーション療法士、歯科医師、歯科衛生士らの多職種で患者さんの代謝栄養状態を評価し、栄養状態、身体機能の維持・回復を目標に最善と思われる栄養管理を提案、支援する組織です。私たちの施設では専任栄養士が軸となり、栄養スクリーニングに基づく支援と、主治医の依頼に応じる形での支援を行っています。急性期のがん専門病院ですので、咀嚼や嚥下といった口腔機能以前に消化管が機能できない方や、代謝異常や高度の消耗など重症な病態に遭遇することも少なくありません。ただ、そのような場合も回復途中に歯科的トラブルで経口摂取が妨げられないよう、回復を見越して口腔内を管理することや、患者さんにとって身近な職種が口腔内の問題に早く気づけるよう啓発することが自分の役目だと考えています。

最近は、栄養指導の場で口腔内の簡易評価が取れる管理栄養士も育ってくれ、嬉しい限りです。今現在、当院に歯科医師は2名、しかし管理栄養士は10名おりますので、口腔内の問題を広い対象から拾い上げるべく引き続き協働体制をとって参ります。

ところで……。
実際の問題として地味に頻度が高いのが「入院時に入れ歯を持って来ていない」という「歯なしの話」なのです、残念ながら!!もちろん入院時に持参するよう指導してはいるのですが……。急性期に限らず、入れ歯を忘れられない存在にするために、さて、何ができるでしょうか?

次号からは患者さんのモチベーションのヒントとなるようなトピックをご紹介したいと思います。

著者光永幸代

神奈川県立がんセンター 歯科口腔外科 医長

略歴
  • 2004年3月、東京医科歯科大学歯学部卒業。
  • 東京医科歯科大学歯学部顎顔面外科教室ならびに
  • 横浜市立大学顎顔面口腔制御学教室での口腔外科の修練ののち、
  • 2014年4月より現職。
所属学会
  • 日本口腔外科学会
  • 日本口腔腫瘍学会
  • 日本がん口腔支持療法学会
  • 日本静脈経腸栄養学会など。

運動とおいしいものを食べることが好きで、患者さんの食べることのお手伝いができる今の仕事に就いていることに喜びとやりがいを感じている。

光永幸代

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