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「患者さんに伝えたい
医科歯科連携のための
食と栄養」 第3回:
貯蔵エネルギーとの付き合い方

2019/7/31 デンタル〇〇デザイン


今回は貯蔵エネルギーについてのお話しです。

炭水化物は1g当たり4kcalのエネルギーを産生しますが、貯蔵分はグリコーゲンに変換され、肝臓と筋肉に蓄えられます。グリコーゲンとしての貯蔵は500~800gといわれ、肝グリコーゲンは半日~1日、筋グリコーゲンはもって数日分のエネルギーにしかなりません。

体内で最大のエネルギー貯蔵の場は脂肪組織です。1gの脂肪組織からは約7kcalのエネルギーが産生されます。恥ずかしながら、筆者自身もそれなりの備蓄エネルギー源をもっており、できることなら早々に手放したいものでもありますが、なかなか都合良くはいかないものです。

脂肪組織が活用され始めるまでのエネルギー源は、直前の食事から得た糖質や、貯蔵されたグリコーゲンの分解によるグルコース産生によって賄われます。およそ72時間以上の飢餓状態になると、ようやく脂肪分解によるエネルギー産生が増えてきます。この状態では筋の異化によって生成されたアミノ酸や脂肪分解によるグリセロール、筋での嫌気的解糖によって得た乳酸によって糖新生が行われます。

前回も少し触れましたが、飢餓によるアミノ酸の分解が進むとタンパク質が喪失されます。状態によっては1日300gもの筋組織が分解されるそうです。しかし代謝率が10~15%抑制され、かつ脳のエネルギー源がグルコースからケトン体(アセトン、アセト酢酸、βヒドロキシ酪酸)へと変換されることにより、この筋肉、タンパク質の分解は抑制されます。脂肪酸化が亢進され、グルコース酸化が抑制されると肝臓でのケトン体生成が亢進し、ここで得たケトン体が神経系や筋のエネルギー源としても使用され始めます。意図せずにこの変化が持続、進行するといずれはすべての臓器の障害をきたします。特に腸管は飢餓による障害を受けやすく、吸収障害など低栄養の悪循環に至ります。身体の生理機能にも障害を生じ、最終的には餓死につながってしまいます。

一方、この過程を「意図的に」「上手に」利用しようとするのが、最近話題となっている俗にいう「糖質制限ダイエット」です。糖質摂取量を減らし、十分なタンパク質、ビタミン、ミネラルや適量の脂質を摂取しつつ、レジスタンストレーニングを併用することで筋肉量を増やし、代謝を低下させないようにしながら主たるエネルギー源をグルコールからケトン体にシフトすることで、貯蓄された(?)脂肪組織を分解し、引き締まった体をつくることができるのです。糖尿病やメタボリックシンドロームのコントロールといったメリットもあります。ただし、糖質制限の度合や、長期継続の影響については、賛否さまざまな意見があります。また、健康を基準に考えると、過剰でない貯蔵エネルギーは人間にとって必要なものともいえます。


図1 筆者も一時期、こういった食事を摂っていましたが、この頃はするすると体が絞られました。


図2 土地や季節ごと折々の誘惑(?)を楽しめるのも幸せなことです。