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「患者さんに伝えたい医科歯科連携のための食と栄養」第5回:タンパク質、しっかり取れていますか?

「患者さんに伝えたい医科歯科連携のための食と栄養」第5回:タンパク質、しっかり取れていますか?
「患者さんに伝えたい医科歯科連携のための食と栄養」第5回:タンパク質、しっかり取れていますか?
前回は体組成に着目し、からだの構成の中でも「骨格筋を保つことが重要」ということをお話ししました。

骨格筋は、その筋繊維の収縮と弛緩により体を動かし、エネルギーを消費します。筋のエネルギー源は主に血中のグルコース、筋グリコーゲン、脂肪酸などが運動の強度に応じて活用されます。また、骨格筋はアミノ酸の貯蔵庫でもあり、体内で組織修復する必要などアミノ酸の需要が高まれば筋肉のタンパク質を分解し、必要なアミノ酸を作り出します。また、飢餓時などエネルギーが枯渇した場合は、アミノ酸からの糖新生によってエネルギーを作ります。

骨格筋はヒトの体内のタンパク質の約40%を占めます。すべての骨格筋細胞内で、常にタンパク質の合成と分解が起こっているため、筋タンパク質の合成量と分解量がつりあわねば骨格筋量を保てません。また筋肉は一定の負荷がないと増加も維持もしません。ヒトの骨格筋量のピークは20歳~30歳代であり、栄養と負荷を特に意識していなければ加齢とともに減っていきます。

では骨格筋を維持、あるいは増やすために、どれくらいタンパク質を摂取したらよいのでしょうか?必要とされるタンパク質の量は年齢や体格、病態によって異なります。前回も紹介したサルコペニアの予防を目的とした場合は、タンパク質は1日に体重1kgあたり1.0g以上の摂取が推奨されています。

特に高齢者ではタンパク質合成能も低下するため、1日の食事の中でも朝昼夕の3食すべてでバランスよくタンパク質を摂取するべきとされます。運動習慣のある人やアスリートでは1日に体重1㎏あたり1.2~2.0gのタンパク質摂取が必要です。必要量に幅がありますが、これは元の骨格筋量だけでなく運動強度や、運動の質(有酸素/無酸素)によって変化します。また、エネルギー源が不足すると、せっかく摂取したアミノ酸がエネルギー源に回されてしまい利用効率が低下します。健常成人の場合、非タンパクエネルギー/窒素(non protein calorie/nitrogen:NPC/N)比は150~200程度がよいとされます。

たとえば、体重60㎏の成人がサルコペニアを予防するために食事から毎日必要なタンパク質を摂ろうと思ったら……。上述のとおり推奨量は1日体重1㎏あたり1gですので、1日のタンパク質必要量は60gとなりますね。食材ごとにタンパク質含有量は異なり、肉類では100gあたりおよそ20g前後、魚介類では100gあたり15~25gほど、卵は1個(50g)あたり6~7gとなります。主食となるご飯は、茶碗1杯(約150g)中にもタンパク質は約3.8g含まれていますが、やはり割合が少ないですね。

このように数字を見ても必要なタンパク質を摂取するためには、しっかり副菜を食べる必要があることがおわかりだと思います。また筋肉量の維持、増加には分岐鎖アミノ酸(BCAA)であるバリン、ロイシン、イソロイシンが重要ですが、タンパク質の元となるアミノ酸の種類、比率も食材によって異なります。


この献立にタンパク質はどれくらい含まれているでしょうか?


牛肉のタンパク質量は100g(脂身を除去したもの)あたり20g前後です。

著者光永幸代

神奈川県立がんセンター 歯科口腔外科 医長

略歴
  • 2004年3月、東京医科歯科大学歯学部卒業。
  • 東京医科歯科大学歯学部顎顔面外科教室ならびに
  • 横浜市立大学顎顔面口腔制御学教室での口腔外科の修練ののち、
  • 2014年4月より現職。
所属学会
  • 日本口腔外科学会
  • 日本口腔腫瘍学会
  • 日本がん口腔支持療法学会
  • 日本静脈経腸栄養学会など。

運動とおいしいものを食べることが好きで、患者さんの食べることのお手伝いができる今の仕事に就いていることに喜びとやりがいを感じている。

光永幸代

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