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「患者さんに伝えたい医科歯科連携のための食と栄養」第4回:重さより、中身で勝負

「患者さんに伝えたい医科歯科連携のための食と栄養」第4回:重さより、中身で勝負
「患者さんに伝えたい医科歯科連携のための食と栄養」第4回:重さより、中身で勝負
前回お話しした貯蔵エネルギー(≒脂質)は、言わばガソリンタンクのようなもの。ガソリンタンクばかり大きく、機動力(≒筋肉)との釣り合いがとれないと、体が重くて動きにくい、となります。

体重は発育に関する測定項目でもあり、非常になじみ深い、自己に関するデータの一つと言えるでしょう。体重計は各家庭でお持ちのところも少なくありませんし、温泉やスポーツ施設などの公衆の場にも置いてあるので、簡単に測れます。

栄養療法に関する報告の多くは、体重の実測値やその変化量、体重(kg)÷[身長(m)]²で表されるBMI(body mass index)が基準となっています。栄養不良を判定するためにさまざまなスクリーニング検査がありますが、検査法によって基準は多少異なるものの、一定期間での体重減少の程度や、BMIが低値であることが判定項目の一つとなっています。また日本肥満学会では、標準体重としてBMI25以上を肥満と定義しています。

しかし、体重が体の構成を完全に表してはいないということもご存じのとおりです。同じ身長、体重であっても、筋肉質の人と脂肪過多の人とでは体格だけでなく病的なリスクも異なります。

筋肉量や脂肪量などを推定するために、上腕部など各所の身体計測値が活用されていました。日本のメタボリックシンドロームの診断基準が男性でウエスト周囲径85cm以上、女性で90cm以上とされるなど、周囲径も体の構成を推定するのに用いられます。

また1980年代より、生体電気インピーダンス分析法(Bioelectrical Impedance Analysis: BIA)が臨床応用され始めました。この方法は、組織ごとに電気抵抗が異なることを利用して、生体に微弱電流を流して測定した抵抗値から身体構成成分を分析する方法です。近年では家庭用の体脂肪計も身近になりましたし、高精度のものは医療施設での栄養評価として広く活用されつつあります。BIA法では「脂肪量」と、体重から脂肪重量を除いた「除脂肪体重」が推定されますが、除脂肪体重(≒筋肉、水分、骨、内臓)が減少するとエネルギー消費が下がるため、蓄えられた脂肪は減りにくくなってしまいます。

さらに、骨格筋量の減少はさまざまな病態の予後へ悪影響をもつことがわかっています。たとえば、高齢期の骨格筋量減少と筋力もしくは身体機能の低下により定義される「サルコペニア」では転倒、骨折、フレイルのリスクが高くなり、サルコペニアの合併のあるがん患者では生存率の低下が、手術患者においては手術後死亡リスクの上昇が報告されています。ただ、サルコペニアは身体活動と適切な栄養摂取による予防、抑制が可能と考えられています。特にタンパク質は、1日に体重1kgあたり1.0g以上の摂取が推奨されています。




タンパク質、普段どれくらい摂れていますか?

著者光永幸代

神奈川県立がんセンター 歯科口腔外科 医長

略歴
  • 2004年3月、東京医科歯科大学歯学部卒業。
  • 東京医科歯科大学歯学部顎顔面外科教室ならびに
  • 横浜市立大学顎顔面口腔制御学教室での口腔外科の修練ののち、
  • 2014年4月より現職。
所属学会
  • 日本口腔外科学会
  • 日本口腔腫瘍学会
  • 日本がん口腔支持療法学会
  • 日本静脈経腸栄養学会など。

運動とおいしいものを食べることが好きで、患者さんの食べることのお手伝いができる今の仕事に就いていることに喜びとやりがいを感じている。

光永幸代

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