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一般診療所で実践する
睡眠時無呼吸症候群の
口腔内装置治療はおもしろい!
第一回:楽しんで仕事をするきっかけづくりに

2019/12/27 臨床ライブラリ

「やっぱり効いてるとお医者さんに言われましたよ!」

診療室に入ってくるなり、患者さんがそこにいたスタッフに嬉しそうに話しています。良い話はスタッフを笑顔にする効果があるため、自然と明るい空気が流れます。

この患者さんは日中の眠気がひどく、よく仕事中(電気工事)にまるで"ヒザカックン"をされたかの如く、突然倒れそうになるのを悩んでいたそうです。ある日、奥さまから「いびきもすごいけど息が止まっているわ」と言われて、紹介医(神奈川県の病院呼吸器内科)で調べた結果、中等度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(以下OSAS:Obstructive Sleep Apnea Syndrome)」と診断されました。



早速、経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP:Continuous Positive Airway Pressure)を始めましたが、頭に巻くベルトが煩わしくて眠れなかったそうです。そこで紹介医より口腔内装置(以下OA:Oral Appliance)の装着を提案されて、近所にあるこの診療所(神奈川県の一般歯科医院)に来院されました。



早速、OAを製作して装着し始めたところ、朝までぐっすりと眠れるうえに目覚めが早く、さらに仕事中の集中力も増したそうです。そこで、紹介医でOAの睡眠中装着なしとありのOSASの重症度を再び調べて、実際にどの程度それが奏効しているのか評価を行っていただきました。すると、OAなしでは重度のOSASと前回より悪化していましたが、OAありでは軽度のOSASへと明らかな改善が認められたのです。現在この患者さんは、紹介医の指示でこのOAを継続して使い、これもいつか止めることができるようにダイエットも続けながら、年に一度OSASの重症度を評価しています。同時にこちらの診療所では、OA長期装着による顎関節痛の出現や、齲蝕および中等度以上の歯周病の有無、OAが破損していないかなど定期的に確認しています。

私は普段、歯科口腔外科医として世田谷区内の病院に従事しています。小さな医局には歯科医師私1名、医師約8名在籍していて、仕事の合間には、「今日こんな患者さんが入院してきてね、この所見どう思います?」との一言から、そこにいるさまざまな専門科の先生たちが興味本位で集まり、ちょっとした症例カンファレンスが自然と始まります。私たちはこの人数で許可病床が合計251床ある5つの病棟の入院患者さんの加療を行いながら、外来診療や緊急入院、急変時や問い合わせの対応なども行っています。ときには専門外の疾患を有する患者さんの入院担当医となることも珍しくありません。そこで、診断や処置法に悩むときは医局に限らず、いつでもどこでも気軽にお互い相談します。「どうすればいいか、ちょっと診てほしい」と思ったとき、他科診療依頼を書く書かない以前に可能な限りその場で相談したり、併診したりしてその日のうちに解決するのです。医科と歯科の連携も当たり前で、これがきっかけで学会や講演発表などを医師とともに行うこともあり、非常に恵まれた職場環境かと思います。

私たちの医科と歯科の連携は院内にとどまりません。当院の歯科口腔外科外来には地域の医療機関だけでなく、当院の医師の外勤先や当院を退職後の転職先からの依頼や相談もあります。以前は、多少遠方であろうと関係なく当科宛に依頼がありました。しかし、どうしても仕事や家庭の事情で当院まで通院できない患者さんもいます。OA治療は、病院歯科口腔外科に限らずどこの診療所でも実践できる技術です。そこで、遠方の患者さんはそれぞれの外勤先診療所より許可を得て、もっとも動線の良いところで依頼を受けるようにしています。じつは、先ほどの患者さんも元当院医師の外勤先からの依頼で、当院への通院は遠くて難しいが、この診療所なら仕事中の合間に受診できると患者さんが希望したのです。

外勤先の診療所でOA治療依頼を受け始めたころ、そこのスタッフたちから「なんでわざわざ下顎を前に出すのですか?顎は痛くならないのですか?口が煩わしくて寝られなくなりませんか?」と多くの質問を受けました。確かにそれらはOAの最大の欠点です。そこで、そのときその場で患者さんに同じことを聞いたところ、「多少の違和感なんて、あの慢性的な眠気から解放されると思えばどうってことないよ」と言われました。これは、「総義歯を装着したら美味しくご飯が食べられるようになった」と喜ばれる患者さんに似たニュアンスを感じます。

「なんだかよくわからないけれども、あの装置を始めた多くの患者さんが喜んでくれている」と、その場にいたスタッフが別のスタッフに伝え、そして少しずつ興味をもって、少しずつ私の仕事を手伝ってくれるようになりました。現在では、その診療所ではそれぞれのスタッフが口腔内装置の製作から着脱練習法や自覚症状の問診まで、非常に手慣れた様子で手伝ってくれます。

何事もそうかもしれませんが、自分たちが一生懸命行ってきた治療に対して患者さんが喜んでくれるうえに、実際にどれだけ改善していたのか自己満足で終わらずに医師が客観的に評価をしてくれるのです。OSAS治療はやりがいを感じることができるだけでなく、楽しんで仕事をするきっかけづくりにもなるものと確信しています。