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歯科医院をM&A(事業承継)するには?
費用や手続きなどをわかりやすく解説

2020/1/28 歯科医院経営

歯科業界は、近年厳しい競争環境にさらされています。
そのような中で、業績の悪化や廃業・倒産を避けるため、歯科医院が選択できる手段の一つがM&A(事業継承)です。
一方で、好業績の歯科医院が、事業規模拡大で分院を増やすためにM&Aを活用することもできます。

今回は、歯科業界の現状やM&Aのメリット、手順、費用、注意点などについて解説します。

歯科業界の開業・廃業の推移

厚生労働省の発表した「医療施設動態調査」によると、2018年3月時点の歯科診療所数は全国で68,756箇所でした。 また、東京商工リサーチの「2017年度『歯科医院』の倒産状況」では、歯科業界における医院倒産件数は20件(前年比181.8%)と大幅に増加していることが分かりました。 負債総額では、11億500万円(前年比36.2%)にのぼっています。 歯科医院は、繁華街や中心部に集中して開業される傾向にあり、厳しい競争環境下にあります。 さらに、少子高齢化に伴う患者数の減少、スタッフの人件費上昇も相まって、歯科医院はまさに苦境に立たされているといえるでしょう。 業績の低迷や将来性を踏まえ、M&A(事業継承)を行う歯科医院もあります。 厳しい環境にさらされている一方で、順調に業績を伸ばして複数の分院を構える歯科医院もあります。 そのような歯科医院の場合は、分院を増やすために、M&Aで他の歯科医院を買収する、という選択肢を選ぶこともあります。

歯科医院・クリニックがM&Aをした方がよい理由

M&Aとは、「Mergers and Acquisitions」の略語です。 日本語訳すると、「合併と買収」-「ビジネスの売買(買収)」「複数のビジネスを一つにまとめる(合併)」を意味します。 売り手の会社は、事業継承や資金調達、自社の生き残りといった目的でM&Aを行います。 買い手の会社は事業規模拡大、新規事業への展開を目的にしています。民間企業だけでなく、クリニックや病院もその対象となります。 ここでは、M&Aの主なメリットを「売り手側」「買い手側」の側面から、ポイントにしてまとめました。

売り手側のメリット

・廃業コストの抑制 ・従業員の雇用確保 ・創業者利益 など 歯科医院を廃業させる際にかかる処分費や店舗の原状回復費などのコストをかけずに、M&Aで事業継承することが可能です。 残された従業員も仕事を辞めずに済み、雇用先を確保できます。 また、事業成長の見込みがあれば、事業売却をして資金を得ることもできます。

買い手側のメリット

・事業規模拡大 ・事業の多角化 ・時間短縮 など 買い手側は、売り手側の持つ不動産や設備、技術や取引先、顧客基盤といった有形・無形の資産を得て、事業規模の拡大を図れます。 厳しい競争環境において安定的に収益を上げるためには、事業の多角化が肝です。歯科業界以外の事業と組合せることで、より強固な経済基盤を生み出せるでしょう。 また、市場調査や人材の育成、インプラントなどの技術向上、事業成長に通常ならかかる年月をM&Aで一気に時間短縮できます。

歯科医院・クリニックがM&Aを行うまでの手順

ここでは、実際にM&Aを進める際の手順をご紹介します。

1.売り手・買い手/仲介者探し

M&Aの目的に応じた買い手を探しましょう。 周りで適切な歯科医院やクリニックを見つけるのが難しい場合は、広いネットワークを持つM&A仲介会社に売り手・買い手を探してもらうのも一つの手です。 M&A仲介会社は、仲介手数料や得意分野など、個々の会社で特徴が異なります。 希望に合うM&A仲介会社を選ぶところから始めましょう。 M&A仲介会社が決まったら、売り手側はM&Aアドバイザーと面談し、買い手側がM&Aを検討する材料となる提案資料を準備します。 提案資料として、決算書や企業概要、事業所に関する書類が必要となる場合があります。 この段階では売り手側の名前を伏せて買い手側に案件を提示するため、提案資料は「ノンネームシート」と呼ばれます。

2.条件の交渉

買い手側がノンネームシートに興味を示すと、M&Aアドバイザーがやり取りを進めます。 この段階で、提案資料の詳細や歯科医院名などを買い手側に開示することを「ネームクリア」と言います。 ネームクリアでは、機密性の高い情報を提供するため「情報漏洩」や「従業員の不信感の高まり」といったリスクを考慮しなければなりません。 ネームクリア後に希望が合致すれば、売り手と買い手の「トップ面談」を実施します。 トップ面談では、M&Aの方向性や売り手側の現状・将来性、売却価格などについて話し合うのが通例です。 トップ面談でお互いに交渉した条件で問題なければ、次の手順に進みます。

3.書類の取り交わし

最後に「意向表明書」や「基本合意契約書」といった書類を締結します。 意向表明書は、買収方法(株主譲渡や事業譲渡)や買収価格に関する情報が記載された書類です。買い手側が作成して、売り手側に提示します。 基本合意契約書には、売却価格や方法、時期、交渉期間、独占交渉権の付与といった情報を記載します。 2つの書類を締結してから、「デューデリジェンス」と呼ばれる弁護士や会計士などの専門家が、売り手側の財務・法務調査を行い、M&Aのリスクを明確にします。 デューデリジェンスの調査結果を踏まえ、売り手・買い手双方の合意を得られると「最終譲渡契約書」の締結を行い、M&Aは完了となります。 ※その後、法務手続きなどが必要になることもあります。 M&Aには、一般的に3ヶ月~12ヶ月の期間を要すと言われています。 余裕を持ってM&Aを進めましょう。

歯科医院・クリニックのM&Aに関する費用の内訳

ここでは、歯科医院のM&Aにかかる費用の内訳について解説します。

M&A仲介会社への諸手数料

売り手・買い手、双方がM&A仲介会社に諸手数料を支払います。 M&A仲介会社によって支払う金額やタイミングは異なります。 具体的な手数料は以下の7種類です。
手数料名 相場 備考
相談料 5,000円~10,000円 正式な依頼の前にM&Aの相談を行う手数料
着手金 50万円~200万円 M&Aの業務依頼を行うための手数料
中間金 50万円~200万円 M&Aの基本合意契約を締結した際に支払う手数料
成功報酬 売却費に左右される (一般的には売却費の1%~5%) M&Aが成立して最終契約を結んでから支払う手数料
リテイナーフィー 30万円~200万円/月 M&A仲介会社に支払う月額の手数料
デューデリジェンス費用 10万円~200万円 M&Aを目的とした財務調査費用(弁護士や公認会計士に依頼) ※基本的に買い手側のみ
業務実行にかかる実費 実費 出張費など、業務実行にかかる費用

弁護士費用

弁護士も、一定の費用が定まっている訳ではありません。 相談から着手金、中間報酬、成功報酬を別々に請求する弁護士事務所もあれば、完全成功報酬型のケースもあります。 また、クリニックや病院の法務調査のためのデューデリジェンス費用の支払いも必要になるでしょう。 弁護士費用は、M&A仲介会社経由で請求されることもあります。

売却費用(土地・建物など)

買い手は、歯科医院やクリニックの評価額を売り手に対し支払います。 これには歯科医院の土地や建物なども含まれます。 歯科医院の売却相場は、2,000万円~3,000万円と言われています。 歯科医院によりますが、3,000万円を超えると買い手が付きづらくなると言われます。

歯科医院・クリニックのM&Aで注意すべき点

歯科医院のM&Aにおいて注意すべき点についてポイントをご紹介します。

スタッフの専門性

勤務医や歯科衛生士の持つ専門性は、歯科医院の強みや特徴につながります。 売り手側は、スタッフの専門性を買い手側にアピールできる準備を整えておきましょう。 買い手側にとって、スタッフの専門性を把握しておくことは、その後の医院経営に関わってきます。 M&Aを検討する判断材料にしましょう。

売上規模(患者数)

患者数や平均客単価から導き出される売上規模を調べておく必要があります。 買収しても、費用を越える売上が立たなければ、M&Aしても利益を得られません。 売り手側は、歯科医院の市場評価を高めるために、普段から売上規模や患者数を伸ばす努力を怠らないでおきましょう。 買い手側は、過去の実績と将来性、双方から判断しましょう。

診察内容・診察科目

提供できる診療内容や診療科目によって、患者層は変わります。 売り手側は、周辺住民のニーズに合った医療サービスを提供できているか確認しましょう。 万が一、ミスマッチを起こしているなら、買い手側がM&Aの際に診療内容や科目を見直す必要があるかもしれません。

社団(財団)法人か

買収の際、一般社団法人や一般財団法人は出資持分がなく、株式譲渡方式を選べません。 代わりに「経営支配権」を譲渡します。 一般社団法人なら社員の立場を、一般財団法人なら評議員の立場を譲渡・譲受することになります。 買い手側、売り手側ともに確認しておきましょう。

計画的な事業戦略でM&Aを

売り手と買い手、双方にメリットのあるM&Aですが、M&Aには多くの時間や費用を要します。 M&Aを行う場合は、今回解説した内容を参考にしながら、綿密な事業戦略を練った上で進めていきましょう。