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2020年4月のピックアップ書籍

2020/4/3 歯科NEWS

『ブタ実習から学ぶ歯周外科サブノート』

エムドゲインが20世紀末に日本でも承認された当時、エナメルタンパク中の生理活性物質を追求する目的で、鶴見大学生化学教室で研究をしていた。品川の東京食肉市場に毎週のようにブタの下顎を取りにいき、萌出している歯列弓には目も触れず、下顎骨内から未完成永久歯歯胚を取りだして、幼弱エナメルからエナメルタンパクを抽出していた。骨ノミを用いて舌側歯槽骨を開窓すると、歯冠形成期の歯胚列がきれいに並んでいる。深江允教授の芸術芸である。そう、実は皆がブタ顎実習でやられているのは、乳歯歯列だったのである。 さて、ブタの下顎を用いた手術のシミュレーションは、学部学生・卒後研修などで多くの大学やスタディグループでも取り入れられており、切開・剥離・縫合などの術式の理解と実践には必須となっているといっても過言ではない。そのような背景のなか、日本を代表するスタディグループであるJIADSのペリオの講師陣らにより本書は執筆された。ブタでの練習方法だけでなく、多数のヒト症例とそれに対する適切な術式がまとめられているので、術式の背景と選択の理解に役立つ。また、手技の実際が事細かく写真とともに掲載されており、そのために必要な技術を習得する目的でブタ下顎を用いた練習方法とその勘所が余すところなく解説されている。 歯周外科初心者だけでなく、稀に歯周外科を実践されている先生にとってもオペ前に術式を確認するのに本書は役立つであろう。 評者:岩田隆紀 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野) 瀧野裕行/松井徳雄・監修 中島 隆/大川敏生・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:7,000円(税別)

別冊the Quintessence『進化する口腔内スキャナー完全ガイド2020/2021』

近年、歯科界においてもデジタル機器の利用が飛躍的に進み、デジタルデンティストリーという用語が一般的になってきた。当初は検査機器あるいは歯科技工分野での実用化が進められたが、口腔内スキャナーの普及が進められ、歯科臨床全般へのデジタル化が期待されている。デジタル化はネットワークによるグローバル化でもある。わが国では医薬品や医療機器の安全性は薬機法で管理されており、新しいデジタル医療機器の利用には制限があったが、口腔内スキャナーは「デジタル印象採得装置」としてクラスⅡに分類され、国際的に利用されている機器が日本で販売できるようになった。世界の歯科界はデジタルをキーワードに、今までにない成長を始めており、国内では日本デジタル歯科学会(発足時は日本歯科CAD/CAM学会)が昨年10周年を迎え、奈良で国際大会を併催して盛大に開催された。CAD/CAM冠の保険収載の枠も広がりつつあり、口腔内スキャナーについても今回の保険収載は見送られたが臨床医の間で関心が高まりつつある。 このような状況下で、本書には現在日本の臨床で使用可能な口腔内スキャナー7機種について、企業からの最新情報に加えて、ベテランの臨床医による臨床応用のヒントが満載されているので、これから口腔内スキャナーを導入しようと考えている臨床医には大いに参考になる。とくに、巻頭の山羽徹先生と丸尾勝一郎先生による「口腔内スキャナー50年の軌跡と2020年最新のワークフロー」の総説はぜひとも一読をお勧めする。口腔内スキャナー開発の歴史や現状に関する解説はもとより、口腔内スキャナーによる光学印象の利点と課題、さらには臨床における得意な分野と現状で苦手な分野を臨床の立場から公平に解説している。臨床医が口腔内スキャナーを導入する際の課題の1つであるコストパフォーマンスに関しても、インプラント単独症例の比較ではあるが費用を提示しており興味深い。また、Digitization(アナログをデジタルに変換すること)とDigitalization(デジタルワークフローにより可惜な利益や価値を生みだす)にも言及されているが、確かにこれまでのCAD/CAMは従来のアナログで製作した補綴装置をデジタル機器で製作する範疇にとどまっていた。今後は真のDigitalizationを目標に、デジタル歯科を発展させる時期になったといえる。本書を活用して、多くの臨床医が今後の歯科医療に夢をもってほしい。 評者:宮﨑 隆 (昭和大学副学長、統括研究推進センター長) 山羽 徹/丸尾勝一郎・監著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:5,000円(税別)

『PMI ペリオドンタルモチベーショナルインタビューイング』

歯周治療を行う歯科医師、歯科衛生士にとって待望の書が出版された。日本の歯科の中心を担う東京医科歯科大学の新田浩教授、さらに講師の礪波健一先生、そして同大学臨床教授であり、JIADS講師でもある土岡弘明先生らの歯周治療のスペシャリストたちを中心としたチームが、カウンセリングアプローチ技法として有名なMotivational Interviewing(MI)を歯周治療に応用できるように改変し、視覚的にも非常にわかりやすく解説されている。評者も歯周治療を軸にした診療を心がけている歯科医師の1人であり、当院の若手歯科医師や歯科衛生士は歯周治療に対するモチベーションが高く、喜ばしいが、彼らが最初にぶつかる壁はいつの時代も歯周外科でもSRPでもなく、患者に対する「動機づけ」、「コミュニケーション」である。かくいう評者も開業当初、歯周治療において苦労したことは同じであり、恥ずかしながらいまだに悩まされることが多い。技術があっても患者の理解、信頼がなければ歯周治療は成立しない。それらを解決するためのモチベーションやコンサルテーションのHow to本はこれまでにも出版されているが、論理的に、かつ行動科学に基づいて書かれた本にはなかなか出会えなかった。そこで満を持して登場したのがこの『PMI』である。 本書は大きく2つのPARTに分かれており、PART1ではMIの特徴と定義から始まる。患者を中心とし、かつゴールに向かわせるようなコミュニケーションで医療面接を行うというのがMIであるが、それを歯周治療に活用するために必要な知識とテクニックについて、実際の会話の例などを提示しながら説明されている。 PART2ではPMIの実践編となっており、実際の症例を元に医療面接や歯周治療の流れを説明している。患者や環境をタイプ別に分け、実際にどのようなコミュニケーションを行い、歯周治療が進んでいったのかという視点で症例が描かれている。また、PART1で述べられていた内容が症例写真とともに具体的に描かれているので、すぐに臨床で使える内容となっている。さらに、随所に散りばめられている「ペリオサプリ」、これが本書のアクセントとなり、よい補足説明になっている。 評者:瀧野裕行 (京都府・タキノ歯科医院) 新田 浩/礪波健一/土岡弘明・監著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:5,000円(税別)