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経営の視点から
予防歯科を考える
~スタッフと患者さんに選ばれる
“グッド・サイクル”とは~ VOL5

2020/5/7 歯科医院経営

医院経営におけるブランディングの重要性

--歯科医院におけるブランディングの重要性について教えてください 廣田 自費診療と保険診療の違いについて考えると、保険診療は"最寄り品(日用品)"なんです。先ほど村岡先生からコンビニのお話がありましたが、わざわざ遠くまで最寄り品を買いに行かないですよね。「なるべく近くで安いところ」というのが最寄り品です。それが自費診療になるといわゆる"買回り品"になります。例えば有名メーカーの高級時計を近所の○○商店で買いませんよね。そもそも売ってないと思いますが(笑)。せっかくロレックス買うのなら、銀座まで足を伸ばしてとか街のデパートでとか、そういうところで買うという気持ちが働くと思うんですけど、その違いこそがブランドなんです。例えば、保険治療でいつも通っている歯科医院を受診していて、急に「インプラント治療が必要です」と言われたら、「どんな治療で費用はいくらかかるのか」ということを患者さんなりに調べられると思います。そこで普段から良好なコミュニケーションがとれていてブランディングされていれば、自費診療の話をされても大抵の患者さんはそのクリニックでの受診をまず考えるでしょう。ですから「自費率が上がらない」と嘆いている先生がいらっしゃれば「最寄り品を売るだけのコンビニ的な経営をされていませんか」とお伝えして、ブランディングから見直していただくようにアドバイスしています。 村岡 そうしたブランドとして患者さんに認知していただくためには、院長だけでなく歯科衛生士やアシスタント、歯科技工士さんを含めて信頼できる技術を持ったチームとして機能させることも重要です。あとは、スタッフ全体にコストに対する意識を変えていくことも必要です。例えば、コストのかからない保険診療が"正義"で、高価な自費診療が"悪"というイメージを持つスタッフも中にはいると思うんです。その足並みを揃える意味で、スタッフには治療内容をできるだけ共有して、自費と保険のメリットデメリットを肌で理解してもらうようにしています。例えば、保険のメタルクラウンを外した時には、それをすぐに捨てずに取っておいて、診療後、クラウンの内面がどれだけひどい状態になっているかをスタッフたちに見せながら「考えてみて、自分の口の中にこれと同じメタルクラウンを入れたいと思う?」と投げかけます。そうすることで自費と保険のメリット・デメリットを肌で理解してくれるようになりますので、患者さんへの説明も変わってきますし、スタッフ全員が院長と同じ方向を見てくれるようなると思います。 あと、スタッフ同士で治療し合ったりすることで、自分も体験できるし、他のスタッフのやり方を参考にすることもできます。例えば当院のベテラン歯科衛生士の超音波スケーラーの当て方はとてもうまくて、当てる前にまず水を出すんですね。いきなりスケーラーを歯に当てるのではなくて「今からいきますよ」というサインとして最初に水を当てる。これが絶妙なタイミングで、患者さんの方も覚悟ができるわけです。そういうことって、スタッフそれぞれのいわば個人プレーですからなかなか共有が難しいのですが、時間がある時にお互いにやり合ってみることで意外と解消できて、結果としてスタッフ全員のレベルアップにも繋がることもあります。 廣田 なるほど。とてもわかりやすいお話ですね。 --最後にこれから若い先生方が充実した歯科医師人生をおくるためのメッセージをお願いします。 医療マーケティングを考える上で大事なポイントとして「情報の非対称性」というものがあります。これは専門分野に携わる方とそうでない一般の人々の間に存在する"知識量の違い"のことで、この違いが大きければ大きいほどコミュニケーションは取りづらくなることを意味しています。医療はその最たるもので、とても専門性の高いものなので、それをわかりやすく伝える努力が常に必要になります。私は東京大学の「医療コミュニケーション学」という講座に研究生として通っていました。そこでは主に 「情報の非対称性」を緩和して 一般の皆様にわかりやすく伝えるスキルについて学ぶのですが、そこでカギとなるのがマーケティングです。これまで村岡先生のお話を伺っていて皆さんもお分かりになったかもしれませんが、マーケティングのセンスがある方は、同時にコミュニケーションについての能力も高い傾向があるんです。私はこれまで学術的な見地からマーケティングを学んできましたが、それを村岡先生のように自然にできてしまう方も確かにいらっしゃいます。ただ、それはとてもまれなケースだと思います。ストーリーで話すとか、例え話を使って分かりやすく伝えることは意識しないと普通はできません。特に、医療をはじめ、弁護士、会計士など専門性が高ければ高くなるほど、知識のない一般の人にとっては何を言っているのか理解できなくなりがちです。これは笑い話ですが、東大医学部の研修医の先生が、患者さんに座薬をお薦めしたところ「それって座って飲む薬ですか」と言われたそうです。これは少し特殊な例ですけど、話す人によってそれだけ伝わり方が違ってくるという例えです。 村岡 やっぱり遊びの部分がないとダメなんですよ。余裕ということではなくて、遊びの中でいろんなこと経験して、もちろん仕事の中でも嫌な思いをしたり、コンプレックスを感じることもあったでしょう。でもそれをはねのけて、皆さんもこれまでやって来られたと思います。企業もそうですが、先生が開業される際に、皆さんそれぞれのストーリー、物語があったと思います。今は成功していても、実は最初は大失敗から始まったとか・・・。 私は昔から異業種の方とのお付き合いが多くあるのですが、そういうお話を聞くことも自分にとってとてもプラスになると思うんです。これから歯科医療にもいろんな展開が考えられると思いますが、若い先生方には一人で悩んでしまうのではなくて、相談相手として別にコンサルタントでなくても、メーカーさんやディーラーさんでもいいんです。私はこれまでそうした方々に常に助けてもらっていましたから、皆さんも周りを見渡してみてそういう方をぜひ見つけて欲しいと思います。歯科医院を経営していく上で、情報は大事ですが、仲のいいメーカーさんやディーラーさんがいればいち早く正確な情報をくれるようになります。「これが売れ筋ですよ」とか教えてくれますし、「この先生はどんな材料を使っているの?」「この製品が販売中止になったらどうなるの?」と聞けば「この製品をお使いです」「このメーカーに類似製品がありますよ」など、言える範囲ではいろんなことを教えてくれます。こういう方々を味方につけてハッピーに乗り越えていただきたいですね。 廣田 これまでいろんな先生にお会いしてきましたが、魅力的な先生に共通して言えることは皆さん年齢に関係なくとてもモテるし愛されキャラなんです。それは異性にということではなくて、スタッフ、患者さん、業者さんを含めたすべての方々に、という意味です。これからの歯科医院経営を考えたとき、スタッフや患者さんから選ばれないことには生き残っていけませんから、ぜひ自分ならではの価値を磨くことで選ばれる「ブランド」を手に入れていただきたいと思います。 --貴重なお話をありがとうございました。
廣田先生の書籍のご紹介
経営の視点から予防歯科を考える
~スタッフと患者さんに選ばれる"グッド・サイクル"とは~ VOL1
経営の視点から予防歯科を考える
~スタッフと患者さんに選ばれる"グッド・サイクル"とは~ VOL2
経営の視点から予防歯科を考える
~スタッフと患者さんに選ばれる"グッド・サイクル"とは~ VOL3
経営の視点から予防歯科を考える
~スタッフと患者さんに選ばれる"グッド・サイクル"とは~ VOL4
経営の視点から予防歯科を考える
~スタッフと患者さんに選ばれる"グッド・サイクル"とは~ VOL5
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