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イートロス医学のススメ
第4回:COVID-19について Vol.3

2020/5/13 臨床ライブラリ

皆さんこんにちは。米永一理(よねなが かずみち)です。
前回(第3回参照)に引き続き、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)についてお話しします。

その後も世界各国の医療者・研究者から続々と報告が上がってきており、少しずつ新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)のこともわかってきました。COVID-19の感染力の強さを考慮すると、たとえ緊急事態宣言が解除されたとしても、早々に元の生活に戻ることは難しい見込みです。長丁場に備えて、厚生労働省からは「新しい生活様式」が求められており、歯科においても、関連する情報に則った「新しい診療様式」を念頭に置いておく必要がありそうです。

そこで今回は、前回よりさらに専門的に、歯科に関連するCOVID-19についての論文を紹介していきます。筆者らがPubMedで検索した範囲内では、歯科関連でエビデンスレベルの高い論文はなく、一般歯科で知りたい情報とは多少論点がズレているものもありますが、参考となる情報をピックアップしました。(注:本文は2020年5月11日に執筆しています。COVID-19に関しては今後情報が変わる可能性があります。正しい情報は、学会ホームページなどで随時ご確認ください)

まずは、第3回で紹介した診療前の口腔洗浄(0.2%ポピドンヨードなどによるマウスウォッシュ)の重要性に関連して、頭頸部がん患者のケアに関する報告です 1)。この論文では、「SARS、MERSの研究より、感染リスクを下げるため、個人防御に加え、慢性鼻副鼻腔炎の治療プロトコールに則り、0.4~0.5%のポピドンヨードで口腔と鼻咽腔洗浄を行うことがよい」としています。この報告で注目すべきは、これらを患者に対してだけでなく、医療者自身も2~3時間毎に1日4回を目安に行うこと勧めていることです。確かに、COVID-19は鼻咽腔のウイルスの感染力が強いため、口腔洗浄だけでなく、鼻咽腔洗浄もすることは理にかなっているかもしれません。

次は遠隔診療に関する報告です 2)。この論文では、「歯科医師はエアロゾルに暴露され、COVID-19の感染リスクおよびクラスターの原因となるリスクが高いため、歯科においても画像を用いた遠隔診療が重要となる。歯科でも適切な機器開発を用いれば、視認より高倍率で口腔内を観察でき、画像の記録・保存もできるためメリットもある」としています。この遠隔診療に対する備えは医科関連の学会でも議論が進められており、すでに内科だけでなく、皮膚科などでも遠隔診療の実現化が進んできています。手技が中心の歯科では遠隔診療は難しいと言われていますが、治療の要・不要を決める診察や、口腔ケアの指導においては可能性がありそうです。

そして自粛期間中の患者管理に関する報告です 3)。この論文では、「COVID-19による自粛により、多くの患者が歯科を受診できていない。一方で、ネット上の情報は不確実であり、口腔がんが見逃される可能性がある。よって、COVID-19の影響で十分な診察ができないときだからこそ、口腔がんに対する質の高い情報を発信し、啓蒙活動を行うことが重要」と説いています。このことは口腔がんのみにかかわらず、歯科疾患全般にいえます。長期化し、自粛疲れがでている今だからこそ、各先生方が、担当患者に口腔の重要性を再度認知いただく情報発信をするときなのかもしれません。

最後に、唾液検査に関する報告です 4)。「一般的なウイルス感染では、唾液中に高力価でウイルスを確認でき、COVID-19の診断や連続的なモリタリングにおいても、唾液は簡便に採取でき、利用することができる可能性がある」としています。第3回で述べたように、現時点では咽頭拭い液より鼻咽腔拭い液のほうがPCR検査の感度が高いのですが、本邦でもこの唾液検査の実用化に向けた準備が、北海道大学などが先頭となって急ピッチで進んでいます。唾液採取の仕方などは歯科が得意とするところであり、適切な検体採取法を把握しておくことが必要になるかもしれません。

そのほかの報告の概要をまとめると、「歯科におけるエアロゾル発生リスクは高く、十分な感染対策が必要。そのために歯科医療者の感染防御だけでなく、患者の受診行動の啓蒙や診察前の口腔ケアを勧めることに加え、今後歯科でも遠隔診療・教育の体制が必要」とする内容が多いようです。また、「感染予防のためラバーダムの使用の推奨」もみられました。

最後に、いまあらためて、「唯一生き残るのは、変化できる者である」とするダーウィンの言葉を思い出しています。常識は、時代とともに変化します。例えば、今では当たり前となった診療中の使い捨て手袋の使用も、30~40年ほど前までは、まだまだ少なかったのではないでしょうか。口腔管理は、継続することが重要であり、自粛できるものではありません。よって、われわれも世の中の情勢に合わせて、歯科で行う対応を発信し、安心して診療を受けることができる体制づくりを迅速に行う必要がありそうです。

今回はここまでとします。
次回はまた状況に応じてお話しさせていただきます。
ではまた次回まで。
ありがとうございました。


参考文献:
1.Mady LJ,Kubik MW,Baddour K,Snyderman CH,Rowan NR.Consideration of povidone-iodine as a public health intervention for COVID-19: Utilization as "Personal Protective Equipment" for frontline providers exposed in high-risk head and neck and skull base oncology care.Oral Oncol 2020;16:104724.

2.Maret D,Peters OA,Vaysse F,Vigarios E.Integration of telemedicine into the public health response to COVID-19 must include dentists. Int Endod J 2020;53(6):880-881.

3.da Cruz Perez DE,Passos KKM,Machado RA,Martelli-Junior H,Bonan PRF. Continuing education in oral cancer during coronavirus disease 2019 (covid-19) outbreak.Oral Oncol 2020;16:104713.

4.Sri Santosh T,Parmar R,Anand H,Srikanth K,Saritha M.A Review of Salivary Diagnostics and Its Potential Implication in Detection of Covid-19. Cureus 2020;12(4):e7708.