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ニュージーランドのコロナ制圧

2020/7/1 臨床ライブラリ

私がニュージーランドのコロナ対策に注目し始めたのは、2020年4月10日のCNNのレポートがきっかけでした。「1,200人の感染者で、死者がわずか1人の国」という内容に引きつけられました。その頃、イタリアではCOVID-19により1万8千人以上の死者を出していました。日本は、その日までのCOVID-19による国内死亡者が約100人で、毎日数名の死亡が報告されていました。

CNN
"This country has very few Covid-19 deaths. See how they did it"
ニュージーランドは南半球に位置するので、これから冬に向かうにあたってコントロールも難しくなるのではという懸念をよそに、厳しいロックダウンも順調に警戒レベルを下げ、2020年6月8日、とうとう感染者がゼロになって首相ジャシンダ・アーダーンが勝利宣言をしました。COVID-19による死者は22人、人口100万人あたりでは約4.5人です。次の日から入国規制以外すべてを解除し、ソーシャルディスタンシングもマスクも必要のない元の生活が戻りました。下のリンクで様子を見てみてください。カフェは人で賑わい、スポーツの試合も観客数の制限がないそうです。 ロイター "動画:NZが生活正常化、国内の制限解除 首相はダンスでお祝い" https://jp.reuters.com/video/watch/idOWjpvC44D8NZAJSKXZ333EDPFIU8YUM まだ30代の若い首相アーダーンは、最初からこのような野心的なゴールを描いて、指揮を取っていたのですね。最初の感染者が発見されてから、3週間も経たないうちに彼女は国境を封鎖し、国内でも厳格なロックダウンを実施しました。観光立国として、この決定は簡単ではなかったでしょうが、他の民主主義国家に比べて非常に早い判断が傷を極力浅くしたのです。彼女への支持率は歴代最高の約60%を記録しました。 時事ドットコムニュース "NZ首相「危機管理」で手腕発揮 人気最高潮、総選挙まで3カ月" https://www.jiji.com/jc/article?k=2020062000315&g=int 重症者を出さないよう早期発見を重視し、症状のある者、濃厚接触者、濃厚でない接触者の全てに検査を行い、下水サンプルも検査して徹底的に管理しました。先月紹介したスウェーデン「コロナ禍におけるスウェーデンの歯科医療」とは対照的です。スウェーデンでは、厳格なロックダウンにエビデンスはないというのが基盤になっていましたが、ニュージーランドは「撲滅が可能であることを示すエビデンスはたくさんある」としています。今回の成功で、ニュージーランドは一つのエビデンスを構築したようです。 The Lancet by Sophie Cousins New Zealand eliminates COVID-19 https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31097-7/fulltext しかし、勝利宣言の後も、海外からの入国者に陽性者が出たことで、油断できない状態ではあるようです。世界では感染者数が増え続けている今、ニュージーランドの国境をどのように再開するのかということは、悩ましい問題です。 stuff Coronavirus: NZ's border to stay shut, no new Covid-19 cases on Tuesday https://www.stuff.co.nz/national/health/coronavirus/300045248/coronavirus-nzs-border-to-stay-shut-no-new-covid19-cases-on-tuesday さて、ニュージーランドの歯科医療については、8週間ほど休診になっていましたが、5月下旬から再開されているそうです。現在の警戒レベル(レベル1)における歯科医療は、まず、患者を2つのリスクグループ(ローリスクとハイリスク)に分けます。 ローリスク患者は、 ・COVID-19の陽性でない、 ・COVID-19の陽性の疑いがない、 ・COVID-19の陽性または陽性の疑いのある人と過去14日以内に濃厚接触がない、COVID-19の症状がない、 ・過去14日以内に海外渡航歴がないか、海外渡航歴のあったものと接触していない です。 これらの患者には通常の歯科医療を行えます。その他のハイリスク患者には、個室とPersonal Protective Equipment(PPE)がある場合に限り、緊急処置のみ行なえます。 ローリスク患者でも、最低限のPPEは必要です。最低限のPPEとは、サージカルマスク、目を保護するもの、グローブ、ガウンが含まれます。これらは、COVID-19が発生する前から徹底されていたことで、いかなる感染源がいつでもあると思って、PPEの正しい着用、器具の消毒・滅菌が指導されていたそうです。 ローリスク患者にエアロゾルが発生する処置をする場合は、ドアを閉めること、できるだけエアロゾル感染を防ぐ措置を取ること(強力なバキュームの使用、ラバーダムの使用、処置前の含嗽など)とされています。処置前の含嗽については、COVID-19が発生する前から、スケーリング前には行っていたそうです。 Dental Council Guidelines for oral health services at COVID-19 Alert Level 1 https://www.nzda.org.nz/assets/files/Standards__Guidelines/Dental_Council_and_Ministry_of_Health_Guidelines_for_oral_health_services_at_COVID-19_Alert_Level_1.pdf ところで、ニュージーランドの歯科医療費についても取材してみました。18歳以上の成人では保険外ですが、条件により特別支援交付金制度などが利用できるそうです。 全顎スケーリング:約24,500円 根管治療:約9,800~126,000円 補綴:約112,000円 抜歯:約12,600~45,500円 上顎智歯抜歯:約24,500円 下顎智歯抜歯:約45,500~52,500円 (1ニュージーランドドル=70円で換算) これを見ていただいておわかりのように、抜歯が根管治療や補綴より安いためか、ニュージーランドの75歳以上の無歯顎者率は28.5%(2018/2019年)と高めです。 New Zealand Government Dental care https://www.govt.nz/browse/health/gps-and-prescriptions/dental-care/ Ministry of Health New Zealand Health Survey https://minhealthnz.shinyapps.io/nz-health-survey-2018-19-annual-data-explorer/_w_449340a9/#!/home
謝辞 ニュージーランドの歯科事情に詳しい児矢野茜さんに貴重な情報と写真を提供していただきました。心から御礼申し上げます。 (本記事は筆者が所属する新潟大学とは一切関係ありません。)