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診療室の片隅でのつぶやき 第2回:コロナ禍ですが災害に備えていますか?

診療室の片隅でのつぶやき 第2回:コロナ禍ですが災害に備えていますか?
診療室の片隅でのつぶやき 第2回:コロナ禍ですが災害に備えていますか?
2020年は早くも半分が過ぎました。私的にもいろいろなことがありましたが、目に見えない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と、令和2年7月豪雨と名が付けられた災害で日本はたいへんなことになっています。まずは、これらの感染症に影響を受けられている方々、災害で被害に遭われた方々やそのご家族にお見舞い申し上げます。このような状況下でわれわれ歯科医師としてできることを再確認したいところです。何しろ予期せぬことは一つずつやってくるとは限りませんから。

さて、なぜこのような話を取り上げたかというと、今回の被災地が少なからず私にも関係するためです。私自身は生まれも育ちも東京都下ですが、ルーツは九州が関係します。歯科医師であった私の父は熊本県で生まれ、6歳まで八代市から少し南に位置する坂本村(現在の八代市坂本町)で過ごし、その後祖父の仕事の関係で8歳まで鹿児島で過ごしたのちに上京しました。私も一度だけ坂本村まで行ったことがあります。訪れた時期は2003年6月、今年のような豪雨とは無縁な晴天で、自然豊かな緑とそのそばを流れる穏やかな球磨川が思い出されます。


昭和初期の坂本駅駅舎(写真左)と2003年6月に訪れた坂本駅。

ですから、今回の豪雨災害の球磨川流域で起きたことが映像として流れるたびに胸が痛みます。そのような状況下で活動している住民、自治体、自衛隊、医療従事者やボランティアの方々の姿が映し出されるたびに自分たちには何ができるのだろうかと、あらためて災害時の歯科医療について考えざるを得ません。

ここ数十年の災害などを経たうえでさまざまな報告や試みがありますが、そういう中で一度は目にしておきたい報告書があります。「大規模災害時における歯科保険医療の健康危機管理体制の構築に関する研究」総合研究報告書です。また、その中にあるパンフレット「大規模災害発生時における口腔ケア活動の意義と実際」は患者さんにも一度は目を通しておいていただきたいものです。さらに、災害時の人の行動心理などを理解するには「テレビドラマ 日本沈没」(1974年)が勉強になりました。この作品では行動心理のほか、今では失われてしまった昭和49年当時の日本の文化、風景が記録されています。



実際の災害(地震、台風、豪雨、豪雪、またそれらにより引き起こされる二次災害など)対策や行動心理は時代によって変化していくため、小説や映画などのようにはいかないことは承知しています。ましてやこのコロナ禍における状況では、よりシビアなものも想定していかなければならないことでしょう。それでもいろいろなものを見聞きして自分なりの解釈をして、歯科医療に携わる者として患者さんに伝えられるものは少なからずあると考えています。

そのあたりについてはまたの機会に。

参考文献ほか
1.大規模災害発生時における口腔ケア活動の意義と実際(パンフレット):
平成19~21年度 
厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)総合研究報告書
大規模災害時における歯科保険医療の健康危機管理体制の構築に関する研究、
http://jsdphd.umin.jp/pdf/nkkk/01-22.pdf(2020年7月15日アクセス)

2.日本沈没(テレビドラマ 1974年):
原作 小松左京、アミューズソフトエンタテインメント、
2006.https://www.amuse-s-e.co.jp/nippon/index1.html(2020年7月15日アクセス)

著者本村一朗

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野 助教

略歴
  • 1991年、昭和大学歯学部卒業
  • 1995年、同大学大学院修了
  • 1995年~2004年、東京医科歯科大学 歯科生体材料学分野 助手
  • 2004年~東京医科歯科大学高齢者歯科学分野 助教
  • 大学院生時代補綴科に所属後、基礎系(歯科生体材料学分野)を経て、
  • 現在の高齢者歯科学分野(有病者高齢者への歯科治療を行うスペシャルケア外来1)に所属。
  • 研究は工学部などとの連携による開発研究が主。
本村一朗

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