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コロナ時代の高齢者ケア

コロナ時代の高齢者ケア
コロナ時代の高齢者ケア
上の写真は、12年前、アイルランドの高齢者施設に知人のお見舞いに行った時のものです。彼女は尼僧で、私たちが突然訪れたにも関わらず、身なりを整え、バッグを持って、施設の応接室に来てくれました。この時も、来訪者はアルコールで手を消毒したものでしたが、今は、このような触れ合いもできなくなってしまいました。どこの国でも、高齢者はCOVID-19のハイリスク者です。日本の厚生労働省のデータでも、下のように、重症者の割合や死亡者率を見ると、年齢別に明らかな結果が認められます。





厚生労働相:新型コロナウイルス感染症の国内発生動向(令和2年8月12日18時時点)
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000657357.pdf

ゆるいCOVID-19対策を取っているスウェーデンでさえ、高齢者施設への訪問は禁止されていて、70歳以上は外出しないよう勧告されていました。日本の高齢者の方々も、周りに高齢者がいらっしゃる方々も相当に気を遣って、日々の生活に制約を強いられているのではないでしょうか。高齢者のCOVID-19を予防しつつ、全身の健康を保持して、社会的な孤独に陥らないためにできることは何か、そこで、ご紹介したいガイダンスがあります。WHO(世界保健機関)の西太平洋地域事務局が2020年7月23日に情報を更新した"Guidance on COVID-19 for the care of older people and people living in long-term care facilities, other non-acute care facilities and home care"です。

下のリンクから無料でダウンロードできます。
https://iris.wpro.who.int/handle/10665.1/14500



このガイダンスの対象は、
・自宅にいる高齢者、長期療養施設にいる高齢者
・高齢者の介護者、友人、家族
・長期療養施設のケアマネージャー・スタッフ・介護者・医療専門家
・在宅ケアのサービス提供者
・コロナ禍対策や地域の医療福祉のストラテジーに関わる政策立案者
です。

内容は、次の3つに分かれています。
- COVID-19に関する高齢者と介護者へのアドバイス
- 長期療養施設、その他の非急性期施設、在宅ケアにおけるガイダンス
- 「ニューノーマル」や「ニューフューチャー」のための政策立案者へのアドバイス

その他に、付記には、
- 身体能力、メンタル面の能力に関するスクリーニング検査
- 高齢者のセルフケア

の2つが表にまとまっていて、最後のセルフケアについては、これらはひと目でわかりやすいインフォグラフィックス版もあります。
https://iris.wpro.who.int/bitstream/handle/10665.1/14500/COVID-19-emergency-guidance-ageing-annex-eng.pdf



COVID-19から予防するための高齢者向けアドバイスについては、一般的な手洗い励行やマスク着用などに加えて、以下のような高齢者特有のアドバイスが挙げられています。
- その地域での高齢者向けサービスについて知ること(宅配サービスなど)
- 2週間分の生活に必需品リストを作り、揃えておくこと
- 緊急連絡先リストを作ること
- ヘルスケア担当者と何が必要なのか相談しておくこと
- 介護者が介護できなくなった場合に備えて、他の支援者を見つけておくこと
- 複数人と家に住んでいる時、誰かがCOVID-19の症状が出た場合に備えて、隔離できる個室を用意しておくこと
- 自分自身で決断ができなくなった場合に備えて、医療、ケア、サポートに何を最重要にしるのか考えておくこと

そして、健康を保持するために次の10のステップが提案されています。
1.睡眠、食事、運動など規則的な生活のリズムを守る
2.電話、ビデオ通話、メール、手紙などで社会的繋がりを保つ
3.毎日30分以上の運動をする
4.水分補給と健康的な食事をする
5.喫煙と飲酒を避ける
6.COVID-19についてのニュースを休み休みにする
7.趣味や楽しいこと、新しいことをする
8.基礎疾患がある場合、服薬を続け、かかりつけ医と相談する
9.COVID-19と関係ない緊急の症状が出た場合、すぐに医療サービスに連絡する
10.数日間連続して、ストレス、不安、悲しさで、日常生活に支障をきたすようなら、心理学的サポートを受ける

具体的な数値で表されているアドバイスもありますので、それらを紹介してみましょう。
・運動を1日30分する(1日5~10分の運動から始めて、1日1分ずつ延ばしていく)
・1日30分日光を浴びる(ビタミンDを作るため。ビタミンDはバランスや動きをよくしてくれる)
・バランスの取れた食事をする(毎日野菜を2.5カップ、フルーツを2カップ、穀類を180g、肉類と豆類を160g。毎週赤身の肉を1~2回、鶏肉を2~3回)
・水を1日8~10カップ摂る
・塩分は1日5グラムまで(小さじ1杯)
・尿失禁に対して、骨盤底筋体操を1週間に2~3回する
・1日2回、フッ化物配合歯磨剤を遣って歯磨きをする
・1日2回、舌磨きをする
・毎日ハッピーなことを3つ考える

その他にも、以下のような長期療法施設のためのガイダンスもあります。
合わせて、是非ご覧ください。

"COVID-19 infection prevention and control : preparedness checklist for long-term care facilities"
https://iris.wpro.who.int/handle/10665.1/14500

"COVID-19 infection prevention and control : communication toolkit for long-term care facilities"
https://iris.wpro.who.int/handle/10665.1/14570

著者西 真紀子

NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)理事長・歯科医師
㈱モリタ アドバイザー

略歴
  • 1996年 大阪大学歯学部卒業
  •     大阪大学歯学部歯科保存学講座入局
  • 2000年 スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員
  • 2001年 山形県酒田市日吉歯科診療所勤務
  • 2007年 アイルランド国立コーク大学大学院修了 Master of Dental Public Health 取得
  • 2018年 同大学院修了 PhD 取得

西 真紀子

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