歯科医院の開業・経営に必要となる銀行口座。 開設する金融機関により、得られるメリットが異なります。 今回はそれぞれの金融機関の特徴や口座開設のポイント、必要な準備について解説します。歯科医院での銀行口座の活用方法
歯科医院で銀行口座を開設するメリットとして、「売上金の管理」「融資時の審査」「イメージブランディング」に活用できる点が挙げられます。 以下、それぞれ詳しく説明していきます。売上金の管理
歯科医院で扱う診療報酬や小口現金といった売上金の管理を銀行口座で行うことが可能です。 資金のやり取りを記載できる記録簿としての役割も果たします。 収支を日計表で記録し、口座残高と差異が生じていないか定期的にチェックしましょう。融資時の審査
金融機関や国、地方自治体から開業・経営に必要な資金調達を行う場合、審査項目の一つとなるのが「自己資金」です。 自己資金がゼロまたは少額では、審査で不利になる可能性があります。 特に銀行は、開業時の融資に慎重になる傾向があります。 融資において、銀行口座の預貯金額を自己資金の証明に利用することが可能です。イメージブランディング
メガバンクなど大手銀行で口座を開設しておくと、歯科医院のイメージを高めることができるでしょう。 取引先が請求や振込を行う際、大手銀行の口座名を見て「しっかりしている歯科医院」だとプラスの印象を抱くからです。 ただし、各銀行に持つイメージには個人差があります。口座開設の金融機関の種類
口座開設ができる金融機関の種類として、以下が挙げられます。 ・都市銀行・メガバンク ・地方銀行 ・ゆうちょ銀行 ・ネット銀行 ・信用金庫・信用組合 各金融機関ごとの特徴について解説します。都市銀行・メガバンク
三菱UFJ、みずほ銀行、三井住友銀行など都市部で展開している金融機関が都市銀行・メガバンクです。 前述の通り、歯科医院のブランディングにつながるだけでなく、全国に支店やATMを展開しているため、取引に対応しやすい特徴があります。 また、同行間では振込手数料がかからない(もしくは低コストの)銀行が多いこともメリットです。 一方で、口座開設時の審査が他の金融機関に比べて厳しく、口座開設に2週間ほど要します。 定款や履歴事項全部証明書を中心に、所在地を証明する郵便物などの提出を求められます。地方銀行
各都道府県でローカルに展開する銀行です。 その地方では、支店やATMの数が多く、サービスも充実しています。 地域密着型の歯科医院を経営する場合におすすめです。ゆうちょ銀行
ゆうちょ銀行は、全国最多の店舗数を誇ります。 全国での取引が可能なだけなく、パソコンやスマホからゆうちょにつながる「ゆうちょダイレクト」を利用すると、同行間のオンラインの送金手数料が月5回まで無料です(※2020年10月現在)。ネット銀行
ジャパンネット銀行や楽天銀行、住信SBI銀行など、店舗やATMを持たないのがネット銀行です。 オンラインで口座開設を完了できます。 振込手数料が他の金融機関と比べて安いため、他行への振り込みの多い歯科医院におすすめです。 一方で、税金の支払い(振替)や日本政策金融公庫の返済には対応できないため、制限がないかをあらかじめ確認しておきましょう。信用金庫・信用組合
銀行と違い、営利を目的としていない金融機関が信用金庫・信用組合です。 一部の地域だけで営業し、中小企業や個人に特化しているため、親身なサポートを受けられるでしょう。 一方で、大企業や地域外の企業・個人には融資できないため、歯科医院の所在地によってサービスを制限されないか、確認してみてください。 ちなみに、各自治体が斡旋する「制度融資」を利用する場合、地域の信用金庫から融資を受けることになります。 融資には口座が必要となるため、信用金庫であらかじめ口座開設しておくと便利でしょう。歯科医院の銀行口座開設のポイント
口座開設時のポイントについて解説します。金融機関の種類
前述の通り、それぞれの特徴を理解した上で、歯科医院に合う金融機関を選びましょう。 融資やブランディング、取引先の範囲(地域か全国か)、振込の頻度、歯科医院の展開(地域密着や全国展開)など、歯科医院の状況を洗い出してみてください。金融機関の支店の場所
金融機関のどの支店で開設するかも大切です。 一般的には歯科医院の所在地に近い支店を利用することをおすすめします。銀行口座名
「○○歯科医院 山田太郎」など、歯科医院名と院長の氏名を組み合わせて口座名を決定する方法が一般的です。 個人で歯科医院を開業した場合は、医院名だけの口座名にできず、氏名を加えなければなりません。 法人の歯科医院の場合は、歯科医院名だけで口座開設が可能ですが、院長の氏名だけでは私的な支出と歯科医院の支出が混ざってしまい、歯科医院の収支状況が把握しにくくなる恐れがあります。 財務調査の計算や資料作りに手間取る可能性もあるため、自身と歯科医院の支出は明確に分けて管理できるようにしましょう。銀行口座の数
口座は、支出管理を簡略化するため、一行にまとめるのが望ましいでしょう。 使用用途によっては、一行だけでなく、複数の銀行口座を設けても構いません。 たとえば、「主な口座はメガバンクで、振込用の口座をネット銀行にする」といった対応も可能です。銀行口座の管理者
通帳やキャッシュカードの管理は、自分自身もしくは配偶者が管理を行うことで、情報漏洩や紛失等のリスクを避けましょう。 暗証番号や届け出印の管理についても同様です。歯科医院の口座開設に必要な準備
口座開設の準備について解説します。 ※金融機関によって詳細は異なるため、口座開設時には各金融機関までお問い合わせください。必要書類をそろえる
個人の歯科医院の場合は、主に次の書類を求められます。 ・本人確認書類(運転免許書、健康保険証、パスポート、マイナンバーカードなど) 法人の歯科医院の場合は、主に次の書類を求められます。 ・定款 ・履歴事項全部証明書 ・法人印 ・代表者の印鑑証明書 ・代表者の実印 ・代表者の身分証明書 ・歯科医院の運営実態が分かる資料(郵便物など) 履歴事項全部証明書や印鑑証明書の準備には特に手間がかかるため、早期から手配を進めておきましょう。金融機関に申し込む
書類を準備したら、金融機関に申し込み、審査結果を待ちましょう。 審査でどこを評価しているかは、金融機関によって異なり、かつ公開されていません。 ただ、一般的に次に当てはまる歯科医院は、審査に落ちる可能性が高まるようです。 ・資本金額が少なすぎる ・固定電話がない ・公式サイトを持っていない ・運営実態が分かる資料に情報が欠けている 上記のポイントには気をつけて申し込みましょう。 また、基本的にはメガバンクや都市銀行より、地方銀行やゆうちょ銀行、ネット銀行、信用金庫の方が審査に通りやすい傾向にあります。銀行口座を活用しスムーズな経営を
今回ご紹介した通り、金融機関によって口座開設で得られるメリットも異なります。 開業時には、まず一行で口座開設し、必要に応じて口座数を増やすことが望ましいかもしれません。 歯科医院の状況に応じて、便利で適切な金融機関を選びましょう。 【歯科開業支援コンテンツ】OneToOne Club