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歯科医院における事業継承とは?
手続きの流れや引き継ぎのポイントを解説

2021/3/22 歯科医院経営

家族や第三者へ歯科医院を事業継承しようとしている(あるいはその逆の)経営者や歯科医師の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
事業継承は承継側・譲渡側双方にとってさまざまなメリットがあります。

一方で、実際に継承して開業するまでには時間がかかる点や引き継ぎの不備などには注意が必要です。

本記事では、歯科医院における事業継承の概要と手続きの流れ、引き継ぎのポイントなどについて解説します。

 

歯科医院の事業継承とは

歯科医院の事業継承とは、既存の歯科医院を別の人に引き継ぐことです。 具体的には、親子間での継承や第三者への継承などがあります。  

事業継承のメリット

事業継承を行う承継側のメリットには以下のようなものが挙げられます。 【承継側((譲渡先)のメリット】 ・開業時の初期費用削減 ・事業の見通しを立てやすい ・患者さんの引き継ぎが可能 事業継承の場合、既存の歯科医院の設備をそのまま使用できるため、新規に開業する場合よりも初期費用を安くできます。 また、事業継承前の経営状況や患者数などから、継承後にどのくらいの来院、売上が見込めるか予想も立てられるでしょう。 場合によっては、前のクリニックから患者さんを引き継げる可能性もあります。 一方で、譲渡側のメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。 【譲渡側のメリット】 ・事業の引き継ぎが容易に行える ・これまで積み重ねてきた資産や信頼を活用できる ・患者さんの治療を継続できる 親族に後継者がいる場合、事業の引き継ぎを容易に行えます。 継承前から歯科医院内で働いてもらえば、患者さんにも認知してもらえるため、スムーズに継承後の開業ができるでしょう。 また事業継承を行えば、それまで積み重ねてきた地域を支える歯科医院としての価値や信頼をそのまま引き継ぐことも可能です。 同じ領域を専門とする歯科医師に継承できれば、患者さんに対して同じ治療を継続して提供できる点も大きなメリットとなります。  

事業継承にかかる費用

事業継承を行う場合、歯科医院を承継側が譲渡側への対価を支払うのが一般的です。 歯科医院の規模によって対価は変動するため、一概に金額は断定できませんが、数千万円単位の費用が発生すると考えておくといいでしょう。 なお、仲介業者を利用して事業継承を行っている場合、譲渡側へ支払うお金とは別に業者に対して手数料を支払う必要があります。

歯科医院の事業継承に関する手続きの流れ

歯科医院の事業継承は、口約束だけで簡単に行えるものではありません。 ここでは、事業継承を行うまでの具体的な手続きの流れについて解説します。  

開業後の予定や歯科医院の概要の熟考

事業継承を考えている場合、譲渡側は、開業時期や開業地、歯科医院のコンセプトなどを考えておきましょう。 継承する歯科医院選びがスムーズに行えるためです。 事業継承候補となる歯科医院は1つとは限りません。 もし、複数の候補が出てきたときでも事前にどのような歯科医院を開業したいのか考えておけば、該当しない場合は候補から外せます。 また概要等をある程度考えていれば、譲渡先を内見する際などにも開業後のイメージが行いやすいでしょう。  

医院継承の専門家へ相談

事業継承のイメージができたら、医院継承の専門家へ相談します。 親子間での事業継承であれば譲渡先を探す必要はありませんが、第三者の歯科医院を継承する場合であれば譲渡側が自分だけで探すことは困難です。 専門家を仲介した方がスムーズに譲渡先が見つかるでしょう。 また専門家は、承継先の候補となる歯科医院の情報を複数保有しているケースが多いため、選択肢を多く持てるなどのメリットもあります。  

契約書の締結

事業継承のサポートを行ってもらう専門家が見つかったら、譲渡側は、契約書の締結を行いましょう。 具体的には、秘密保持契約と仲介契約を結びます。 秘密保持契約とは、事業継承の交渉過程で知った機密情報を漏らさないことを定めた契約のこと。 仲介契約は、手数料等に関する取り決めを扱っている契約です。  

事業継承の候補先の選定

専門家との契約が結べたら、引き続き事業譲渡先の候補を探します。 専門家から候補を紹介される際は、歯科医院の名前や場所などの詳しい情報は教えてもらえません。 興味があり詳細を知りたい場合は、譲渡側が自身・自院の情報を伝える必要があります。  

譲渡先の歯科医院との面談や内見

候補先から興味のある歯科医院が見つかった場合は、実際に譲渡側と承継側とで面談や内見を行います。 専門家からある程度の情報は得られますが、内装や設備の使用状況など実際に目で見てみないとわからない部分もあるため、譲渡先の内見は欠かせません。 また、承継側の院長先生との面談などを通して、普段どのような診療を行っているのか、どのような患者さんが多いのかといった情報を譲渡側が把握します。  

譲渡先の決定・条件調整・合意書締結

面談や内見で得た情報をベースに、譲渡側は、譲渡先となる歯科医院を選びます。 譲渡先を決めたら、継承条件の細かい調整を行いましょう。 内装や既存設備の老朽化が予想以上に進んでいる場合は継承条件にも影響が出るため、しっかりと話し合いを行い双方が納得できる条件の設定が必要です。 条件調整が完了したら合意書締結を行います。  

買収監査の実施・最終条件の調整・契約書の締結

合意書締結の後は、承継側が、譲渡側の歯科医院にリスクがないか買収監査を実施します。 買収監査とは、買収対象となる歯科医院の財務内容の正当性を確認するための調査のことです。 調査は承継側が行います。 専門的な知識を要するため、M&A仲介会社など専門家への依頼が一般的です。 監査の結果、継承時のリスクや財務情報の間違いが発覚する可能性はゼロではありません。 そのような場合は、継承条件を再度調整したうえで譲渡契約書を締結します。 なお個人経営など、歯科医院の規模が小さい場合は監査を行わないケースもあります。  

継承の実行・支払い

譲渡契約書の内容に従い、事業継承を実行します。 具体的には、譲渡側が承継側へ歯科医院の資産を継承し、承継側が譲渡側へ対価を支払うことで継承完了です。  

行政手続き

継承完了後すぐに開業できるわけではなく、各種行政手続が必要となります。 開業するためには、歯科医院の承継側が歯科医院を管轄する保健所に「診療所開設届」を提出し、保健所の検査を受ける必要があります。 なお、開業後保険診療を行う場合は、厚生労働省が所管する地方厚生局へ、保険診療医療機関の指定申請を併せて行わなければなりません。  

資産関連のハード部分の引き継ぎ

事業継承の際には、建物や医療機器といったハード部分の引き継ぎも行われます。 建物や設備の老朽化の進行具合を確認したうえで、必要に応じて内装工事や設備の交換などを行わなければならないため、しっかりと確認しておきましょう。 また、患者さんのカルテや継承前から勤務しているスタッフなども引き継がれます。 患者さんの傾向やスタッフのスキルを把握し、どのような体制で開業するのか考える必要があります。  

治療方法などなどソフト部分の引き継ぎ

事業継承ではハード面以外にも、治療方法のようなソフト面での引き継ぎも行われます。 譲渡側は事業継承を行うことを患者さんに伝えるほか、診療に使用する機器の操作方法なども教える必要があります。 また承継側は、患者別にどのような診療を提供しているのか、どのような治療を望んでいるのかといった情報を把握する必要があるほか、具体的にどのような治療に対応できるのか確認しなければなりません。

【ケース別】歯科医院を事業継承する際のポイント

事業継承と一言で言っても、親子間での継承や第三者への継承、医療法人の継承などケースはさまざまです。 ここでは、ケース別に事業継承を行う際のポイントについて解説します。  

親子間や親族間で継承する場合

親子間や親族間での事業継承は、第三者への継承に比べて容易であるように思えますが、いくつかの点に注意しなければなりません。 例えば、親子でも歯科医師としての専門分野が異なる場合は、既存の患者さんを引き継げない可能性があります。 もし患者さんの引き継ぎができない場合は、譲渡側が承継側へ他の歯科医院を紹介するなどの配慮も欠かせません。  

第三者間で継承する場合

第三者間で事業継承を行う場合、承継側は譲渡側の資産や負債が不透明であるため、事前に何を引き継ぐのか明確にしておくことが大切です。 また、建物や設備の老朽化の進行具合や、特殊な治療を行っている患者さんの情報などについても譲渡側が承継側へ事前に共有する必要があります。 事前共有がなければ、「このような状況は聞いていない」「特殊な治療が必要な患者さんの存在は聞いていなかった」などトラブルにつながりかねません。  

個人診療所の場合

個人診療所を事業継承する場合は、営業権や資産譲渡代金の設定が必要となります。 また、譲渡側は保健所・厚生局など関係各所へ診療廃止届を提出しなければなりません。 そのほかにも譲渡側は、患者さんへ事業継承を行う旨を伝え、必要に応じて別の歯科医院を紹介するなどしましょう。  

医療法人の場合

医療法人を事業継承する場合、営業権や債務、償却資産の売却などの条件を考慮したうえで交渉を進めなければなりません。 具体的には、譲渡側が以下のような点を考える必要があります。 ・理事や理事長の交代に伴う役員の変更 ・金融機関への届出および連帯債務等の変更(債務がある場合) ・資産譲渡代金の設定 など 個人診療所の継承同様、医療法人であっても患者さんへの通達は忘れてはいけません。  

2か所以上の都道府県に診療所開設している医療法人の場合

都道府県をまたいで2箇所以上に診療所を開設している医療法人を継承する場合、譲渡側は厚生労働大臣の認可を得る必要があります。 こちらは、医療審議会を経由した都道府県知事の認可ではないため注意してください。  

譲渡側が歯科医院の価値を高めたい場合

歯科医院を譲渡する側が、歯科医院の価値を高めた状態で事業継承したい場合は、以下の点に留意する必要があります。 ・内装工事を行う ・医療機器をリニューアルしておく ・広報活動を継続して行っておく 事業継承するとなると、費用のかかる内装工事や医療機器のリニューアルは不要だと考える経営者は少なくありません。 しかし、工事や機器のリニューアルにより、歯科医院としての価値を高められるため、より高い評価を受け事業継承できる可能性があります。 事業継承の対価も高くなるかもしれません。 また、継承に伴い広報活動をやめる経営者もいますが、事業継承において患者数は非常に重要なポイントです。 譲渡側が継続して広報活動を行い、患者数を維持・拡大することは、大きなアピール材料となります。  

承継側がスムーズに開業したい場合

承継側がスムーズに歯科医院を引き継ぎ開業したい場合は、以下の点に注意しましょう。 ・内見をしっかりと行う ・患者対策 専門家を通じた事業譲渡先の案内は、書面による提示が一般的であるため、内見を通して詳細な情報を知る必要があります。 具体的には、設置されている医療機器やその老朽具合、内装の雰囲気などです。 医療機器に関しては、使用者によって調子の良し悪しの感覚は異なるため、実際に自分の目で見る必要があるでしょう。 また事業継承が決まった場合、承継側は譲渡側の既存患者さんに認知してもらう機会を設けることも大切です。 チラシやホームページなどを通した情報発信のほか、事業継承の前に譲渡側の歯科医院で勤務するといったことも効果的でしょう。  

まとめ

今回は、歯科医院における事業継承の内容と具体的な手続きの流れ、引き継ぎのポイントなどについて解説しました。 事業継承は、譲渡先探しから実際の開業まで多くのステップがあります。 スムーズに開業するためには、承継側と譲渡側の協力が必要不可欠です。 事業継承を検討中の歯科医院経営者・歯科医師の方は、今回の内容を参考に手続きに取り組んでみてください。