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歯科医院スタッフが退職する理由とは?離職に対する効果的な対策を紹介

歯科医院スタッフが退職する理由とは?離職に対する効果的な対策を紹介
歯科医院スタッフが退職する理由とは?離職に対する効果的な対策を紹介
人材不足が叫ばれる歯科業界では、国家資格を保有していながらも、「サービス残業が多い」「お給料が上がらない」といった理由から職場を辞める歯科医院スタッフが後を断ちません。

経営者であれば、優秀なスタッフに少しでも長く働き続けていてほしいと考えるのは当然のことだといえるでしょう。

今回は、歯科医院スタッフが仕事を辞める理由と離職率を下げるために必要な対策を紹介します。

歯科医院スタッフの離職の現状

【出典】歯科衛生士の勤務実態調査報告書 - 公益社団法人 日本歯科衛生士会

数ある業種・業界の中でも、歯科医院スタッフは特に離職率が高い職種です。 これは、公益社団法人 日本歯科衛生士会が、平成26年に歯科業界で働く従業員16,113名を対象に実施した「歯科衛生士の勤務実態調査報告書」でも示されています。 『勤務先の変更経験』という項目では、これまでの転職回数について「ない」と回答した人が24.3%であったのに対し、「ある」と回答している人が74.4%という結果となっています。 この結果から見ても、歯科医院スタッフの離職率が高いことが伺えます。

歯科医院スタッフが仕事を辞める理由

「職場の雰囲気が殺伐としていて、なかなか馴染めない」「院長や他のスタッフと馬が合わない」「有給休暇の申請が通らず希望の休みがとれない」「サービス残業が多く体の疲れがとれない」など、歯科医院スタッフが職場を辞める理由は人それぞれです。 ここでは、歯科医院スタッフが離職を考える主な理由についてを見ていきましょう。

スキルアップできるチャンスが少ない(職場環境)

【出典】歯科衛生士の勤務実態調査報告書 - 公益社団法人 日本歯科衛生士会

歯科医院スタッフが離職を考える代表的な原因として多いのが、「スキルアップできる環境が少ない」というものです。 事実、「歯科衛生士の勤務実態調査報告書」でも、職場で改善してほしいことのひとつに「教育研修・レベルアップの機会の充実」がランクインしています。 社会に出てある程度の経験を積むと、「もっと患者さんに喜ばれる歯科衛生士になりたい」「今よりも収入をアップさせたい」など、今後のキャリアについて考える歯科スタッフが多くなります。 そのような成長意欲のあるスタッフにキャリアを積んでもらうためには、まずは現在のスキルを磨くためのセミナーや研修に参加してもらう、資格を取得してもらうことなどが重要です。 歯科医院によっては、外部セミナー参加費用を会社で負担あるいは資格取得補助といった、従業員のスキルアップに必要な福利厚生が充実しているところもあります。 しかし、それはごく一部で、大半の歯科スタッフがセミナーや研修費用を自己負担しているのが現状です。

人間関係

歯科業界に限らず、多くの人は職場での人間関係に悩んでいます。 特に、女性従業員が多い歯科医院では、職場の派閥争いに巻き込まれ中立を保つのに疲れてしまったり、自分の知らないところで悪口を言われたり、厳しい口調で当たられたり、マウンティングをとられたり……。 挙げたらキリがないほど、職場での人間関係のトラブルや悩みは尽きません。 最初のうちは楽しかったはずの仕事にもやりがいを感じられなくなり、最悪の場合は精神的に追い詰められて社会復帰できなくなってしまうこともあります。 医院によっては、上司がいじめや嫌がらせの事実を知っていながら関与しないというケースもあるようです。

給与

【出典】歯科衛生士の勤務実態調査報告書 - 公益社団法人 日本歯科衛生士会

歯科衛生士の勤務実態調査報告書」によると、平成27年時点での歯科衛生士の年収は、「200万円以上300万円未満」が34.2%ともっとも高い数値を示しています。 年収が300万円だとすると、単純計算で月の手取りは25万円となります。 低賃金が問題となっている介護福祉士の月の手取りが15〜17万円前後であるのに比べると、歯科医院スタッフの給与は比較的高い方だといえるでしょう。 一見すると余裕のある金額のようにも感じますが、東京都内で一人暮らしをしている場合は家賃や光熱費、通信費、食費などの固定費で貯金する余裕はないものです。 加えて、キャリアアップ のためのセミナー参加費を全額自己負担するとなると、さらにコストがかさみます。

結婚や出産などのライフイベント

【出典】歯科衛生士の勤務実態調査報告書 - 公益社団法人 日本歯科衛生士会

歯科衛生士の勤務実態調査報告書」の調査で、過去に転職経験があると回答した人のうち、離職理由として「出産・育児」という理由を挙げた人が13.7%ともっとも多いことがわかります。 このほか、「結婚(12.0%)」、「家庭の事情(6.6%)」などが挙げられます。 女性は、結婚や出産、育児といったライフイベントをきっけかけに、以降のキャリアが変化していきます。 そのため、女性従業員が比較的多い歯科業界では、産休・育休明けの従業員が職場復帰できる環境を整えておくことが大切だと言えるでしょう。

歯科医院スタッフの離職を減らすための対策

従業員が辞めることによって、現場で働く従業員一人ひとりの業務負担が多くなり、サービス残業やが増えて休みも取りづらくなります。 歯科医院スタッフが心身ともに疲れ切ってしまい、また退職者が出てしまう……という具合に負のループに陥ってしまいます。

面接・採用時の工夫

どんな人が、どんな職場で、どんな業務を行っているのか、求人票を見た求職者が実際に働いているイメージができる募集要項を作ることが大切です。 給与や賞与、勤務時間、年間休日、有給の有無のほかに、忘れてはならないのが福利厚生です。 厚生年金や社会保険、育児休暇、出産祝い金、セミナー参加費負担、人間ドックの健診費用補助、企業型確定拠出年金などが挙げられます。 「福利厚生の充実度=働きやすさ」と考え、福利厚生を主軸に転職先を選んでいる求職者は意外と多いのが現状です。

働きやすい職場づくり

近年は、ワークライフバランスを重要視した働き方を望む人が増えています。 ワークライフバランスとは、仕事のやりがいはもちろんプライベートも大切にするという考え方のひとつです。 仕事が楽しくなることで、心にゆとりも生まれて業務へも前向きに取り組めるようになります。 そのため、経営者はスタッフ一人ひとりの業務の割り振りを見直したり、情報を共有したりすることで、業務効率をアップし従業員満足度を向上させることにつながります。 従業員は会社にとって価値ある重要な資産であるため、一人ひとりがストレスなく働き続けられる環境づくりを心がけましょう。

給与体制の見直し

給与は一般的に、基本給に残業代、役職手当、皆勤手当、賞与・ボーナスなどがプラスして支給されます。 勤続年数や年齢に応じて給与額が決まる年功序列制度は、「能力に対して給与が見合っていない」といった有能な従業員のモチベーションが下がる原因となってしまします。 そのため、給与体制を見直し、頑張りに応じた手当をプラスすることで従業員の成長意欲向上に繋がります。 例えば、ホワイトニングやインプラントといった審美歯科に関する専門知識を持った「日本歯科審美学会認定 歯科衛生士」や、交通事故や加齢などさまざまな事情により歯を失ってしまった患者のケアや治療が可能な「インプラント専門歯科衛生士」など、資格取得に応じた手当などが考えられるでしょう。

成長できる環境

スタッフがスキルアップできる環境を用意することで、モチベーションを向上させ、離職率を抑えられる場合があります。 例えば、「歯周治療」や「プラークコントロール」といった外部セミナーの参加費用を負担したり、患者からの信頼が厚いことで知られるスウェーデンの歯科事情についてを学ぶ海外研修を実施したりといった方法があります。

歯科医院スタッフに退職を伝えられた時は?

歯科医院スタッフから突然仕事を辞めたいといわれたら、以下の退職手続きを行いましょう。

①退職の意思と理由の確認

まずは、退職の意思と理由を確認してください。 理由を確認するのは、雇用保険被保険者離職証明書に記載する必要があるためです。 理由を聞いた上で引き止めたいと考えた場合は、待遇や制度の改善などを提案し、医院側の問題を解決することで思い留まってもらえないか話し合ってみても良いでしょう。 また、相手がどれだけ医院に貢献していたのか、どれほど貴重な人材であるかを伝えることも効果的です。

②退職届の提出依頼

スタッフの退職の意志が変わらない場合は、退職届を提出してもらいましょう。 退職届の提出は、就業規則での取り決めがなければ必須ではありませんが、トラブル発生のリスク回避のため、提出が望ましいです。 退職届の確認後、残りの有休や引き継ぎの期間を考慮した上で退職日を決定し、退職手続きを開始します。

③引き継ぎ依頼

遅くとも退職日の3日前までには引き継ぎが完了するよう、退職するスタッフへ依頼します。 退職後、残りのスタッフが混乱しないよう、口頭での引き継ぎに加えてデータや文書ファイルなどにまとめておいてもらうとより安心です。 引き継ぐ内容は、歯科器具の扱い方や保存の仕方、担当患者さんの情報などです。 患者さんの情報については、カルテの内容だけでは伝わらない詳細な内容も口頭で引き継いでもらいましょう。

④退職手続き

社会保険や雇用保険、住民税などに関する手続きを行う他、制服や携帯電話など医院から貸し出していたものを返却してもらいます。 また、年金手帳や雇用保険被保険者証など必要な書類をスタッフに返す作業も忘れず行なってください。 最後に「これまで医院のために頑張ってくれてありがとう」と感謝の気持ちを伝えましょう。

まとめ

歯科医院スタッフが長く働き続ける環境作りを整えることも、経営者の重要な役割のひとつです。 従業員に退職したいという気持ちを持たせないよう、職場内の雰囲気づくりを意識する、常日頃からコミュニケーションを取って悩みを聞くなど、働きやすい環境を整えることを心がけましょう。

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