アザラシは、爪楊枝によるトレーニングで慣れてきた。しかし獣医師は、感染根管治療の経験がない。そこで某歯科医院で治療の様子を見学に行かれた。 そして、いよいよ根管治療の開始。とりあえずの目標は、根尖まできっちり拡大することではない。可及的に根管内をきれいにし、持続的な感染を防ぐことである。 まずは、拡大と綿栓を用いての清掃。 アザラシに、魚(マアジ)を与えたり、イヌ笛を利用しスモールステップで行う。ファイルを奥まで入れると肉芽に当たり出血するようだ。どうやら根尖は開いている可能性が高い。当初は、綿栓に白い膿が付着していたが、回数を重ねると腐敗臭がなくなった。 感染根管治療の様子 そこでビタペックス根充を行い、水硬性セメントで仮封。 でも、根充剤がきれいに入っているのか気になるところだ。 次は、デンタルエックス写真の撮影トレーニング。 割り箸でフイルムを挟むが、口腔底が浅く口内法の撮影には苦労する。やっとのことで撮影できた。何とか根充剤が入っているようだ。 もちろん、ビタペックスは吸収されるので経過観察が必要だ。 獣医師は、アザラシの感染根管治療の一例を、昨年開催された野生動物学会で発表した。 日本で初めての試みだったので、大好評だったと言う。 次回に続く 前回の記事 動物園の動物達も高齢化爪楊枝でトレーニング
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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