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歯科医院の節税対策とは?税金の種類や対策方法、ポイントまとめ

歯科医院の節税対策とは?税金の種類や対策方法、ポイントまとめ
歯科医院の節税対策とは?税金の種類や対策方法、ポイントまとめ
「売上をしっかり立てたのに、税金でほとんど持っていかれてしまった」という経験がある歯科医師の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
節税対策をして、手元の収入をできるだけ確保するためにはどうしたらいいのでしょうか。

今回は、歯科医院経営にかかる税金や税金対策の方法、ポイントについて解説します。

歯科医院の経営にかかる税金

個人事業主の税金は、主に次の通りです。 ・所得税:事業所得などに課税される ・住民税(都道府県民税・市町村民税):事業所得などに課税される ・事業税:社会保険診療報酬以外の事業所得などに課税される ・償却資産税:ユニットやX線装置といった医療機器、設備などの所有に課税される ・固定資産税:土地や家屋の所有に課税される ・消費税:商品やサービスの消費の事実に課税される 医療法人の場合にかかる法人税は、個人事業主における所得税に当たります。 所得税には累進税率(最大税率45%)が適用されるため、1,800万円を超えると所得税・住民税を合わせて50%の税率となってしまいます。 医療法人が払う法人税には、一定税率(利益800万円まで15%、利益800万円超えで19%)が適用されるため、利益1,800万円を超えても法人税(19%)・住民税(約11.78%)合わせて約30.78%で収められます。 ※住民税は都道府県や市区町村により異なります。 【関連】歯科医院の医療法人化とは?売上目安やメリット、注意点まとめ

歯科医院が節税する目的

そもそも何を目的に歯科医院で節税を行うのでしょうか。 たとえば、年収4000万円の歯科医師(医療法人理事長)と年収400万円の勤務歯科医師を比べてみましょう。 ※年収以外の家族構成などの条件は同じとします。 【参考】No.2260 所得税の税率|国税庁 【参考】所得金額から差し引かれる金額(所得控除)|国税庁 【参考】No.1410 給与所得控除|国税庁 ■年収4000万円の歯科医師 給与所得者控除:245万円 社会保険料控除:360万円 保険料控除:12万円 配偶者控除:38万円 扶養控除:38万円 基礎控除:38万円 課税所得:3269万円(=4000万円-控除合計731万円) 所得税額:1027.6万円(=3269万円×40%-所得控除280万円) ■年収400万円のサラリーマン 給与所得者控除:134万円 社会保険料控除:36万円 保険料控除:12万円 配偶者控除:38万円 扶養控除:38万円 基礎控除:38万円 課税所得:104万円(=400万円-控除合計296万円) 所得税額:5.2万円(=104万円×5%) 上記を見ていただくと、年収が10倍になると、所得税の負担は約200倍に達することがわかります。 これが累進課税制度の影響です。 歯科医師として多忙な日々を過ごし、患者さんにより良い医療を提供しようと奮闘しているにもかかわらず、その対価が税金で手元から離れていってしまうのです。 もちろん納税は国民の義務ですが、できるだけ節税をした方がいいと考えられるでしょう。

歯科医院の節税対策の方法

歯科医院の節税対策について解説します。

未払金・未払費用の計上

経費の中には、水道料金など使用月から1~2ヵ月後に支払うものがありますが、経費を費用に計上できるタイミングは支払った期日ではなく、使った期日です。 そこで支払い期日までタイムラグのある経費は、すべて未払い計上をすることで、当月の費用として計上できます。 また、同じように給与の締日が月末でなければ、締日から月末までの給与を未払い計上することもできます。

簡易課税制度の適用

自由診療などによる課税売上高が5,000万円以下の場合、簡易課税制度を適用できる可能性があります。 簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を事前に提出していることが条件です。 歯科医院で簡易課税制度が適用されると、消費税の納税額が低くなるケースも多いです。 注意点として、高額の医療機器などを購入する場合、簡易課税制度を適用しない方が節税につながることや、そもそも簡易課税制度の対象外となることが挙げられます。

医療法人化

医療法人化とは、事業に「法人」という人格を持たせることです。 前述で触れた通り、医療法人化することで事業所得に対する課税を減らすことができ、それ以外にも得られるメリットはいくつか存在します。 ただし、個人事業主から医療法人化するためには複雑な手続き申請が必要で、事務負担も増えるため、中長期的な視点から必要性を検討してみてください。 医療法人化について詳しく知りたい方は、こちらをご参照ください。 【関連】歯科医院の医療法人化とは?売上目安やメリット、注意点まとめ

医療用機器の購入

歯科医院が医療機器を購入すると、通常より多く経費を計上できることがあります。 たとえば、取得価額500万円以上で医療用機器を購入した場合、減価償却費だけでなく、その取得価額の12%を多めに費用として計上できます。 ただし、この制度の利用するために以下の要件を満たさなければなりません。 ・青色申告書を提出している個人または法人であること ・医療保険業を営んでいること

中小企業倒産防止共済への加入

これは、個人事業主だけができる節税対策です。 中小企業倒産防止共済は、取引先の倒産により売掛金債権などが回収できなくなった場合に、共済金の貸付けを受けられる制度です。 この制度では、掛け金全額を費用として計上でき、加入から40ヵ月経つと全額返金されます。 ただし戻って来た掛け金は利益となるため、その使い道をあらかじめ考えておく必要があります。 また、医療法人は加入できないため、数年内に医療法人化を検討しているなら注意してください。

生命保険への加入

これは、医療法人だけができる節税対策です。 医療法人では、支払った生命保険料を損金として計上できます。 また、生命保険は年払いにしておくと、支払い時に1年分の損金を計上可能です。 注意点として、生命保険の種類によっては税務上の取り扱いが変わるため、加入前に必ず確認しましょう。

歯科医院の節税対策のポイント

最後に、節税時のポイントについて解説します。

どのくらい節税できるかシミュレーションする

先ほど紹介した方法を実行に移す前に、どのくらいを節税できるか事前に計算しておきましょう。 税金は、収入から経費を差し引いた金額に課税されます。 基本的には、「①収入を減らす」「②経費を増やす」ことで節税につながります。 個人事業主は、収入を減らすと累進課税制度によって税率も変わる可能性があります。 ここで注意したいことは、節税を意識するがあまり結果的に損をしていないか?という点です。 たとえば「経費を増やすために100万円の設備投資をした結果、15万円所得税を減らすことができた」といった場合、無理に設備投資をしなくともそのまま税金を払った方が余計な出費にならなかった、ということが考えられます。 新たな医療機器を購入すれば、短期的には節税につながるかもしれませんが、その後も医療機器を維持管理するための時間や労力、費用がかかることもあるでしょう。 また、高額な医療機器の購入にはまとまったお金を用意する必要があるため、金融機関から借り入れることもあるはずです。 金融機関の借り入れ審査では、歯科医院が「継続的に利益を出しているか」もチェックされます。 節税のことばかり考えて少ない利益で申告し続けると、審査には不利に働いてしまう可能性があります。 本当にその節税をすべきか、実行前に歯科医院全体の経営を踏まえて検討してください。

お金を使わない節税対策を選ぶ

お金を使う以外にも節税対策はあります。 たとえば、前述で挙げた「未払金・未払費用の計上」や「簡易課税制度の適用」などがあり、手元にキャッシュを残しながら節税することが可能です。 歯科医院経営の資金繰りにおいても、キャッシュを確保しておくことは重要です。

世帯で考える

家族で歯科医院を経営している場合に、家族の給与を「専従者給与」として支払える制度があります。 この制度を適用できれば節税につながりますが、金額設定には注意してください。 もし、給与額が多くなると、家族の所得税・住民税が増えたり、社会保険の扶養から外れたりと、世帯全体では節税ができていない可能性があるからです。

経営全体を踏まえた節税対策を

歯科医院でできる節税対策についてご理解いただけたでしょうか。 むやみやたらに節税をしても、長期的な歯科医院経営では不利に働くこともあります。 節税対策によるメリット・デメリットを踏まえつつ、安定的な歯科医院経営を目指してみてはいかがでしょうか。

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