歯科衛生士は、雇われではなく独立して「フリーランス」としても働くことができます。
フリーランスになるとリスクを抱える一方で、仕事の幅や収入の可能性が広がっていくでしょう。
今回は、歯科衛生士の働き方やフリーランス歯科衛生士のメリット・デメリット、収入や仕事内容、なり方などを解説します。
歯科衛生士の主な働き方3パターン
歯科衛生士には主に「正社員(常勤)」「パート・アルバイト(非常勤)」「業務委託(フリーランス)」の3つの働き方があります。
正社員
歯科医院等に就職し、フルタイムで正社員として働く方法です。
一般的には、歯科衛生士の学校を卒業してから、まず正社員で働きます。
社会保険や賞与・ボーナスなどの福利厚生を受けられるケースが多いため、安定して働きたい方におすすめです。
パート・アルバイト
非常勤でパートタイマーとして働く方法です。
正社員よりも働く時間や日数が短いため、その分給料は少なくなります。
一方で働く時間を自由に選びやすく、出産や育児との両立を図るために選ぶ方も多いです。
ただし、福利厚生の面では正社員より不利な傾向があり、賞与・ボーナスも少ない傾向があります。
非常勤としていくつかの歯科医院で勤務している場合、広い意味ではフリーランスに近い働き方となるでしょう。
業務委託(フリーランス)
歯科医院に"雇用"されるのではなく、業務委託契約を結び、自分で仕事を受けるのがフリーランスという働き方です。
正社員やパート・アルバイトとは異なり、毎月一定の給与を受け取れる訳ではありません。
働いた分だけ給与を受け取れる「歩合制」です。
「自分で営業をかけ、勤務先を見つけて契約を結ぶこと」を継続していくこととなるでしょう。
フリーランスの歯科衛生士の業務内容については後述しますが、一人前に業務をこなせるだけでなく、スタッフを育てたり、歯科医院経営をコンサルティングするなど基準の高いスキルが求められます。
フリーランス歯科衛生士のメリット・デメリット
フリーランス歯科衛生士の平均収入に、公的な統計データはありません。
しかし、一例として前線で活躍するフリーランス歯科衛生士の方の中には、勤務時代の3倍の収入を得ている方もいらっしゃいます。
不安定な収入ではありますが、自分の努力次第で上限を伸ばすことができるのが、フリーランス歯科衛生士の魅力といえるでしょう。
【参考】フリーランス歯科衛生士 丸橋理沙さん インタビュー第2回 「フリーランスになった!」|e-dentist
次に、フリーランスの歯科衛生士についてメリット・デメリットをご紹介します。
フリーランス歯科衛生士のメリット
▼働く時間場所を選べる
フリーランスの歯科衛生士は、キャリアを積むことで「週何日・何時間働く」という労働日数・時間を医院との交渉次第で自由に決めることも可能になります。
働く場所についても同様です。
ライフスタイルに合わせて働き方を柔軟に決めることができるでしょう。
▼組織に縛られない
一つの歯科医院で働く場合、職場の人間関係に悩むこともあるはずです。
しかし、フリーランスの場合、働く歯科医院を選ぶことができ、一つの組織だけに縛られることはありません。
自分の好きな人と仕事を進めることができます。
▼収入に上限がない
歩合制では、収入に上限はありません。
自分が働けば働くほど収入も増えていきます。
正社員のように評価や役職、勤続年数、資格などで収入が決まるのではなく、自分の努力と腕次第で正社員以上の収入を得ることができるでしょう。
フリーランス歯科衛生士のデメリット
▼収入が不安定
毎月決まった給与が振り込まれる訳ではないため、勤務先から仕事を受けられなかったり、労働時間を減らせば当然収入が下がります。
さらに、経済ショックや感染症のまん延など、社会的な影響によって収入が大きく下がることもあるでしょう。
万が一を想定し、生活費を確保しておくことが望ましいです。
▼福利厚生や育成制度がない
歯科医院に雇われると福利厚生を受けることができます。
たとえば、社会保険料は雇用主が半額負担してくれますが、フリーランスは全額自己負担です。
正社員の場合、年金制度では「国民年金」と「厚生年金」の両方に加入できるパターンが多いですが、フリーランスは「国民年金のみ」で受け取れる年金額にも差が出てきます。
また、一般的に歯科医院では先輩から後輩に技術やノウハウを指導する育成制度があります。
一方のフリーランスは基本的には即戦力を求められ、自力で成長していかなければなりません。
▼孤独な一面もある
組織に縛られない一方で、一人で仕事を進めていくのがフリーランス。
意思決定を自分自身で行うため、「間違った判断をしたらどうしよう」「ずっと一人で働くのか」といった不安に駆られることもあるでしょう。
フリーランス歯科衛生士の仕事内容
続いて、フリーランス歯科衛生士の主な仕事内容について解説します。
歯科衛生士業務
基本的な歯科衛生士の業務です。
プラスで自分の持っている認定資格などを活かし、歯周病やインプラント、審美などある分野に特化し、専門的な業務を行うと人材として希少価値を高めることができるでしょう。
スタッフの育成・教育
勤務先の歯科医院の要望にあわせ、独自の育成カリキュラムを作成し、スタッフの教育(実習やセミナーなど)を行うこともあります。
技術指導や接客など基本的な業務から、専門分野の知識・スキルを指導することもあるでしょう。
カリキュラムの構成作成力や指導力などの能力を求められます。
歯科医院の経営コンサル
歯科医院やスタッフが抱えている悩み・課題を、第三者として解決していきます。
たとえば、スタッフが「勤務時間の長さ」に不満を感じている場合、全ての業務を洗い出し、どのように効率化すれば勤務時間を減らせるかを考えます。
そして解決策を院長に提案し、実際の導入を検討してもらいます。
業務効率の悪さは人件費の非効率を引き起こすため、歯科医院全体の経営の改善につながるでしょう。
的確な経営コンサルを行えるフリーランス歯科衛生士は少ないため、貴重な人材となるはずです。
実績を積み重ねれば、フリーランスではなく会社(法人)として、経営コンサルを請け負える可能性もあります。
講演やセミナーへの出演・開催
これまでお伝えした3点、「歯科衛生士業務」や「スタッフの育成・教育」、「経営コンサル」などのノウハウは、歯科医院にとって非常に重要です。
一つの歯科医院ではなく多くの歯科医療業界に対し、そのノウハウを提供する価値があるため、講演やセミナーへの出演・開催の仕事につながります。
人気の講師になれば、1回の公演でまとまった報酬を得ることができるでしょう。
執筆活動
講演やセミナーのように人前で話すのではなく、文章で書いて伝えることもできます。
自分のブログやSNSでの発信に加え、有名になることで書籍や専門誌の執筆を求められることもあるでしょう。
書籍を出すと、販売した部数から印税収入を得られます。
フリーランス歯科衛生士になる方法
フリーランス歯科衛生士になるのに、必ずしも特別な資格を取得する必要はありません。
歯科衛生士の免許さえ持っていれば、開業届を税務署に提出し、今日からでも独立することができます。
フリーランス歯科衛生士の仕事には、一定レベル以上の業務、専門や経営の知識、指導力や発信力などさまざまな力が求められます。
これらに応えられる力があれば、正社員以上の収入を狙うことも可能です。
衛生士学校を卒業していきなりフリーランス歯科衛生士になることは難しいかもしれません。
まずは、就職先の歯科医院で基本的な業務や専門分野の知識などを身につけ、実力をつけてからの独立が望ましいでしょう。
【関連】歯科衛生士におすすめの資格13選!取得メリットやスキルアップの条件を解説
まとめ
フリーランスの歯科衛生士は、収入などが不安定な一方で、 可能性も大きく広がる働き方です。
正社員やパート・アルバイトの安定した働き方や収入に満足できないのであれば、検討してみてもよいのではないでしょうか。
女性には結婚や出産、育児といったライフイベントもあります。
人生設計も踏まえながら、自分の理想とするキャリアプランを立ててみましょう。