現在、口腔機能の評価方法として、歯科診療室では口唇閉鎖力や舌圧測定装置などが利用されているが、集団を対象とする場合は使いにくい。 そこで、簡便な評価法として以下の方法があげられる。 1."吹き戻しテスト":規格化された"吹き戻し"(長息生活)で4段階のレベルがある。 どの段階まで吹けるかどうかで判定する。 参考:https://d.dental-plaza.com/archives/10955 2."ロウソク吹き消しテスト":椅子に座り10cm~30cmの距離にロウソクを立て、吹き消すことが可能かどうかで判定する。 参考:https://d.dental-plaza.com/archives/10724 3."口唇の縦横比による評価":口腔機能の発達に問題のある場合、口唇が厚くなり、口が開いているケースが多い。 そこで口唇を撮影し、写真上で口唇を計測しその縦/横比を求める。 その比に応じて1/2型、1/3型、1/4型の三段階に分類し判定する。 参考:https://d.dental-plaza.com/archives/11619 これらについては、すでに述べた。 この他にも"4.上口唇捕捉テスト"がある。 これは小さなスプーン上に"ヨーグルト"、"タマゴボーロ"、"あられ"を置き小児の下口唇の前に差し出す。 そして、上口唇での捕捉状態により判定する。 さて、愛知県私立学校歯科医会は、これらの方法を利用し幼稚園児(年長児163名)の口腔機能について調査された。 そのなかで興味ある結果を紹介する。 まず口唇形態(口唇の縦横比)と口腔機能との関係について述べる。 口唇形態の分布は1/4型は33.1%、1/3型は49.1%、1/2型は17.8%であった。 また上口唇捕捉テストは、捕捉可能群(1回で捕捉)は47.3%で、不完全群(2~3回で捕捉)21.6%、不可能群は31.1%であった。 両テストの関係について調べた結果、口唇形態が1/4型では88.1%の園児が捕捉可能に対し、1/2型ではわずか6.7%となり70.0%が不可能であった。 さらに、同じ園児に20cmの距離で"ロウソク吹き消しテスト"を行った。 ロウソク吹き消しの可能群は65.9%、不可能群は34.1%であった。 両テストの関係は、口唇形態が1/4型では73.3%が可能に対し、1/2型では16.7に過ぎず83.3%が不可能であった。 以上のように口唇形態は、"上口唇の捕捉機能"や"ロウソク吹き消しテスト"と深い関係があることがわかる。 参考) 高柳幸司:園児の口腔機能と食・生活習慣の実態調査,日本学校歯科医会誌,128:70-76,2020.
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
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