2021年2月28日、オンラインセミナー「日曜のフィーカ」で徳島大学名誉教授の西野瑞穗先生が、御自身のPhDプロジェクトとして開発・研究されたフッ化ジアンミン銀の開発秘話を含めたお話をしてくださいました。1970年に日本で発売されたフッ化ジアンミン銀が、半世紀の時を超えて世界中で注目されていることは、度々お話してきました。 •「ノーベル賞の思い出」(2019年12月2日) •失活歯の二次齲蝕予防にフッ化ジアンミン銀は?(2022年3月25日) •フィンランドでの学会でフッ化ジアンミン銀(2023年5月30日) いかんせん、50年以上も前のことで、日本以外ではどのような経緯でフッ化ジアンミン銀が開発されたのかほとんど知られていません。西野先生直々のこのウェビナーは、歯科医学史にとっても非常に貴重だと思い、録画していたものに通訳士の岩上早苗さんに英語字幕をつけてもらって、最近、YouTubeで一般公開しました。 この動画に対して、様々な方から感謝のことばをいただきました。その中でも大変感動的だったのが、米国のからの3人のメッセージでした。 「西野先生、あなたは私のヒーローです」 と綴られています。 また、マグカップには西野先生の写真を、GVブラックの写真の横に入れて使っているとのこと。どれほどのヒーローなのか伝わってきます。 Photo by Dr Jeanette MacLean, DDS Diplomate, American Board of Pediatric Dentistry Fellow, American Academy of Pediatric Dentistry Affiliated Children's Dental Specialists 米国では小さな子どもの齲蝕治療では全身麻酔の使用が選択されています。全身麻酔は子どもたちに苦痛を与えないという利点がある一方、高額であるというだけでなく、合併症でそのまま覚醒しない子どもも毎年一定数いるという忌忌しき欠点もあります。試算によると、1年で20〜50人という驚くべき数。 海外においてフッ化ジアンミン銀の効果が臨床試験で認められ始めた2005年から、米国でも利用され、その後、この簡便で安価な齲蝕進行抑制薬が、全身麻酔による歯科治療を激減させ、子どもたちの命を救ったということです。その証拠となる論文もたくさん紹介してくれました。それらはすべて、NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)のサーバー上に作った「SDF Library」に挙げています。「日曜のフィーカ」2024年6月16日の参考文献リストにも含まれています。 一般の人向けにフッ化ジアンミン銀のことが報じられた The New York Times や、PBS NewsHour のコメント欄にも感謝のメッセージが溢れています。西野先生の動画では、日本の齲蝕洪水時代、毎日のようにランパントカリエスの子どもたちが来院し、小児歯科医としてどうしたらいいのだろうと悩む日々の中から、フッ化ジアンミン銀の開発が始まったとのこと。海の向こうで時代を超えて、同じように人々を救っていらっしゃることに感動を覚えます。是非、多くの方と、この動画を共有してください。 https://youtu.be/7_wumLNh8po
著者西 真紀子
NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)理事長・歯科医師
㈱モリタ アドバイザー
略歴
- 1996年 大阪大学歯学部卒業
- 大阪大学歯学部歯科保存学講座入局
- 2000年 スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員
- 2001年 山形県酒田市日吉歯科診療所勤務
- 2007年 アイルランド国立コーク大学大学院修了 Master of Dental Public Health 取得
- 2018年 同大学院修了 PhD 取得
- NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP):
http://www.honto-no-yobou.jp
https://www.instagram.com/psap_2018/
https://www.facebook.com/yobousika
https://twitter.com/makikonishi