歯科医院を開業するためには、諸官庁に該当の書類を提出する必要があります。 あらかじめ必要な手順や期限を知っておかないと、予定日通りに開業できなくなってしまう可能性もあるでしょう。 今回は、歯科医院の開業に必要な書類や記入の注意点、提出のポイントなどについて解説します。歯科医院の開業・開設の流れ
歯科医院開業の基本的な手順は、次の通りです。1. 自治体の窓口で相談する
予定日通りに開業するために、あらかじめ自治体の窓口で相談しておきましょう。 施設の建設計画や名称、標榜科目などに不備があると、開業に支障が出ることも考えられます。 詳しくは後ほど解説します。2. 歯科医院の施設を完成させる
建設計画を進めて、施設を完成させましょう。 開設できても、この段階では保険診療を行うことはできません。3. 開設届を提出する
歯科医院を開設してから10日以内に、管轄の保健所に「診療所開設届」を提出します。 こちらも、詳しくは後ほど解説します。4. 実査を受ける
保健所から歯科医院施設の実査を受けます。 届出書類との違いや、構造の不備がないかをチェックされます。5. 社会保険の手続きを行う
保険診療を行うために必要な手続きです。 管轄の厚生局で「保険医療機関指定申請書」を提出します。 詳しくは後ほど解説します。6. 保険診療を始める
社会保険の手続きを終えれば、保険診療を始めて医院経営を行えます。 【関連】歯科医院開業までの手順とは?準備期間やおすすめの開業時期歯科医院開業時に提出する書類
歯科医院の開業時に諸官庁へ提出する書類について解説します。歯科診療所開設届
開設から10日以内に管轄の保健所に提出しましょう。 あわせて以下の書類も提出します。 ※詳しくは、管轄の保健所ホームページをご確認ください。 一例として、東京都の保健所で提出する書類をご紹介します。 ・管理者の医師又は歯科医師の臨床研修修了登録証の写し及び免許証の写し ・管理者の履歴書 ・診療に従事する医師、歯科医師の臨床研修修了登録証の写し及び免許証の写し ・業務に従事する歯科衛生士等の免許証の写し ・土地及び建物の登記事項証明書 ・土地又は建物の賃貸契約書の写し ・敷地の平面図 ・敷地周辺の見取り図 ・建物の平面図 ・X線診療室放射線防護図 ・診療所(歯科診療所)への案内図 【参考】診療所・歯科診療所の開設等 - 東京都福祉保健局 厚生局に開設時の書類の写しを提出する必要があるため、各書類を最低2部ずつ用意しておきましょう。保険医療機関指定申請書
保険診療を行うためには、厚生局から認められる必要があります。 保険医療機関指定申請書は、そのために提出する書類です。 注意点として、保険医療機関指定申請書の提出から指定を受けるまでに1ヶ月ほど期間を要します。 その期間中は、すべて自由診療で行うこととなります。 また、指定後の遡及は適用できません。 保険診療に差し支えのないように、申請を済ませておきましょう。 あわせて、以下の書類を主に提出します。 ・診療所開設届の副本または受理証明書 ・保険医登録票の写し ・開設者の歯科医師の写真を貼付した履歴書 ・診療に従事する歯科医師の免許証の写し ・敷地の平面図 ・建物の平面図 ・診療用X線装置設置付届 ・診療所への案内図労災保険指定医療機関指定申請書
業務中の万が一の事故に備えて管轄の労働局に提出する、労災保険指定医療機関になるための書類です。 あわせて、以下の書類を主に提出します。 ・病院(診療所)施設等概要書 ・開設許可証 ・労災指定病院等登録(変更)報告書 ・知事届出事項に係る届出書の写し ・その他労災診療費の算定に際して必要な事項の記載された書類 (地方厚生局へ届け出た施設基準に関する受理通知の写し)歯科医院の各種開業書類の記入に関する注意点
各書類の記入の注意点について、解説します。歯科診療所開設届
以下の3点にご注意ください。 ・開設場所を正しく記載 登記簿謄本や賃貸契約書などに書いてある住所と同じように記載しましょう。 ビル名やテナント名を省略してはなりません。 ・開設年月日は届出より前の日付 開設日とは、実際の営業開始日ではなく、「施設が完成して営業を始められる状態になった日」のことです。 未来の日付を書くこともできません。 ・診療日や診療時間の変更は届出が必要 開設当初に予定していた診療日・診療時間から、運営上変更することもあるかもしれません。 しかし、開設届に記載した診療日・診療時間以外での診療は認められていません。 変更する場合は、管轄の保健所に「診療所開設届出事項変更届」を提出する必要があります。保険医療機関指定申請書
以下3点にご注意ください。 ・歯科医院名を正しく記載 登記簿謄本と同じ名称にします。 略称を使うことを避け、スペースの有無まで正しく記載しましょう。 ・病床数を必ず記載 無床の場合でも、「0床」と記載します。 ・電話番号 歯科医院長の携帯・自宅の電話番号ではなく、歯科医院の電話番号を記載しましょう。労災保険指定医療機関指定申請書
以下2点にご注意ください。 ・指定機関の効力 指定機関に認められてから、3年間効力が続きます。 廃業や休止時には手続きが必要となりますが、そうでない場合は手続きなしで自動更新となります。 ・変更事項の届出 歯科医院の名称・所在地、診療科目などに変更があった場合は、都度、その旨を届出する必要があります。歯科医院の開業書類の提出におけるポイント
歯科医院開業届の提出時に押さえたいポイントについて解説します。提出前に事前相談を行う
自治体の窓口であらかじめ相談しておくことで、書類や施設の不備を防ぐことができます。 不備が見つかった場合は、解消するまで開業できないため注意してください。 ・建設計画の確認 実際の工事に取りかかる前に、部屋の用途や構造について確認しておきましょう。 完成してからの改造や造り直し、万一の場合は開設自体の取りやめとなる恐れもあります。 ・名称の確認 歯科医院長の名前や地名に紐づいた名称なら問題はありません。 しかし、過度な表現や優れた医術を提供していると連想させる名称は避けましょう。 ・標榜科目の確認 診療科目は、医療法で定められた科目の名称で申請しなければなりません。届出期日を必ず守る
開業から10日以内に開業届を提出する必要があります。 また、保険診療を行う場合は、医療機関指定申請書を厚生局へ提出します。 この申請書の受付は、毎月締め切り日を設けています。 指定日は、締め切り日の翌月1日以降です(ただし、管轄の厚生局によって異なります)。 締め切り日に間に合わなければ、翌々月まで保険診療を行えない場合もあります。 営業開始日から逆算して、適切なタイミングで書類を提出しましょう。提出のタイミング
諸官庁で書類を提出する際には、混雑していて待ち時間がかかることもあります。 できるだけ空いている時間帯に提出することをおすすめします。 事前の相談は、午前中の早い時間の方が丁寧に対応してもらいやすい傾向にあります。 提出の場合は、役所は定時ぴったりに終了するため、昼休み直前や終業時間間際に提出すると、スピーディに処理してもらいやすいです。 ちなみに、提出時には印鑑を持参することをおすすめします。 訂正の必要な場合に「訂正印」を押して、すぐに変更できるからです。 その場で変更できれば、二度手間を防げますよ。逆算してスムーズな開業を
歯科医院の開業を検討している方に向けて、開業時に必要な書類について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。 開業日を決めてから、施設の工事や各書類の提出期限などを踏まえ、上手にスケジューリングしておきましょう。 開業については、以下の記事も参考にしてみてください。 【関連】歯科医院の開業に資金はいくら必要?内訳や調達方法、ポイントまとめ 【関連】歯科医院を開業するメリットは?年収が良い・儲かるのは勤務医or開業医どっち? 【関連】歯科医院を開業するなら「立地」が大切!土地の種類や選び方を解説 【関連】歯科医院が開業に失敗してしまう理由とは?廃業の理由や経営を成功させるポイント 【関連】開業した歯科医師の年収はどのくらい?勤務医・他の医院との差や年収推移まとめ 【歯科開業支援コンテンツ】OneToOne Club