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PhDを取得して50年後の”Jubilee Doctor”

PhDを取得して50年後の”Jubilee Doctor”
PhDを取得して50年後の”Jubilee Doctor”
ドイツ、スウェーデン、フィンランドには、「博士号(Doctor of Philosophy: PhD)」を取得した人を50年後にお祝いする習わしがあります。ドイツでは「ゴールド」の意味である ”Goldene” を、スウェーデンやフィンランドでは ”Jubilee” を称号の「博士」(Doctor) につけます。

2024年10月25日、私はスウェーデン・マルメ大学での年次学術式典(Annual Academic Ceremony)に参加する機会がありました。24年前に留学していた時にもこの式典に参加しましたが、今回は会場が新しい場所に変わっていたためか、雰囲気がだいぶ違っていました。



今回は「カリオロジー(齲蝕学)」の大家、Dowen Birkhed先生が ”Jubilee Doctor” の称号を受ける、つまりPhDを取得して50年に当たるとのことで、ちょうど私がヨーロッパ滞在中であったこともあり、光栄にも招待を受けました。Birkhed先生には、このデンタルライフデザインのコラムでも何度も協力していただいています。

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式典の始まりは音楽と共に受賞者が入場し、詩の朗読がありました。そして、旧学長から進学長への引き継ぎが厳かに行われました。”Jubilee Doctor” の他、各学部の新教授、その年にPhDを取得した人、名誉博士号を受けた人、優秀な教員と認められた人たちが表彰されました。歌などのパフォーマンスがところどころに盛り込まれながら、一人一人に学位や賞が生オーケストラの演奏の下に授与されました。全体で3時間近くに及ぶ式典でした。PhDや名誉博士号取得者には(1)月桂樹冠またはシルクハット、(2)指輪、(3)証書が渡されます。



50年前の1974年に発表されたBirkhed先生のPhDのタイトルは “On the cleavage of starch and disaccharides in the human oral cavity” でした。当時では最も若いPhD取得者の記録を塗り替えられたとのこと、現在でもお元気でご活躍のために、”Jubilee Doctor”を授けられました。PhDを取得してから50年後も健在でいることは大変貴重で、会場で直接表彰されたのはBirkhed先生のみでした。50年前に授けられたシルクハット、指輪、そしてガウンを身に着けて登場したBirkhed先生は、歓声に包まれて”Jubilee Doctor”となりました。下のリンクからその様子を見ていただけます。
https://youtu.be/prsNDSFQRQg



下のリンクからは式典全体の英語副音声を聞くことができます。Birkhed先生の偉業の紹介は1:43:11頃から始まり、日本とのコラボレーションについても述べられています。
https://mau.se/en/about-us/annual-academic-celebration/

受賞者は10人を招待することができるそうです。Birkhed先生は2人のお孫さんを呼ばれていましたが、おじいさんが皆から尊敬されてお祝いされている様子を目の当たりにして、自分もPhDを取って、Jubileeを取りたいと言っていました。このように学問を究めることへの尊敬と威厳が新しい世代に受け継がれていく、これがノーベル賞の国、スウェーデンなのだなあと感慨深く思いました。



著者西 真紀子

NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)理事長・歯科医師
㈱モリタ アドバイザー

略歴
  • 1996年 大阪大学歯学部卒業
  •     大阪大学歯学部歯科保存学講座入局
  • 2000年 スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員
  • 2001年 山形県酒田市日吉歯科診療所勤務
  • 2007年 アイルランド国立コーク大学大学院修了 Master of Dental Public Health 取得
  • 2018年 同大学院修了 PhD 取得

西 真紀子

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