TOP>臨床情報>規格性のある口腔内写真を撮ろう【2】口腔内写真の規格性とは

臨床情報

規格性のある口腔内写真を撮ろう【2】口腔内写真の規格性とは

規格性のある口腔内写真を撮ろう【2】口腔内写真の規格性とは
規格性のある口腔内写真を撮ろう【2】口腔内写真の規格性とは
口腔内写真はなんのために撮影するのでしょうか。

口腔内写真の最大の利点は、文字や数字では記録できない情報を保存でき、肉眼では気づきにくい問題点や変化がわかることです。特に診査や診断、再評価には欠かせませんし、経過や結果、予後の写真を比較することで治療効果の確認や反省を容易にします。また、患者さん自身に口腔内の状況や治療効果を写真で見てもらうことで、見えにくい口腔内を視覚的、客観的に把握してもらいやすくなりますので、術者と患者さんの共通理解が得られ、結果として両者の信頼関係の構築、治療への協力性獲得へ結びついていくと思います。

さらに、学会やスタディグループなどでプレゼンテーションを行うにあたり、口腔内写真は資料として必須です。

このように、有用な口腔内写真にとって「規格性」とはなんでしょうか。

口腔内写真の規格性とは、撮影する倍率、撮影画像の明るさや色調などを標準化して、つねに同一条件で撮影することを意味しています。さらに構図が適切で、ピントがシャープにあっており、被写体深度が深く、目障りなもの(口唇、口角鈎、ミラーの縁、唾液の泡など)がなるべく写り込んでいないことが望ましいとされています。

それでは、なぜ口腔内写真に「規格性」が必要なのでしょうか。

まずはもっとも大切なことですが、術前・術中・術後・経過観察時の写真を比較する場合、規格性があれば、つまり撮影倍率や構図、色調などが統一されていれば、それらの写真の正確な比較が可能となります。

また、規格性のある写真は一枚の写真から得られる情報量が多いと言えます。具体的な例として図をご覧ください。

図1

両者は上顎咬合面の写真ですが、aの写真は咬合面を斜めから撮影しているため、歯列アーチの対称性や左右犬歯の位置や角度が正確にはわかりません。つまり、これらの情報が欠落しているわけです。一方、bの写真では咬合面を真上から撮影しているので、歯列の対称性などがよくわかります。したがって、aの写真よりも一枚の中に含まれている情報量が多いと言えるでしょう。

さらに、ピントがボケていたり、唾液がたくさん写り込んでいると、やはり、その部分の情報は失われているわけですから、ピントがシャープかつ広範囲にあっていて、唾液などが写り込んでいない写真が望ましいわけです。

加えて、規格性のあるきれいな写真は、患者さんへの説明や学会などでの発表時に、伝えたい情報をより正確に相手に伝えることができますし、院内で撮影の規格を統一していれば、撮影者が変わっても同一規格の写真が保存できますから、古い資料と最新の資料を比較することも可能です。

どれだけ多くの言葉を費やすよりも、たった一枚の写真によって、より多くの情報を記録し、伝えることができます。そして「規格性」は、その写真の価値を高めてくれます。せっかく撮影するのであれば、意味のある写真を撮りたいものです。


図1:上顎咬合面観での例。
『成功例・失敗例で学ぶ 規格性のある口腔内写真撮影講座』(P18より)。

規格性のある口腔内写真を撮ろう【1】はじめに
規格性のある口腔内写真を撮ろう【2】口腔内写真の規格性とは
規格性のある口腔内写真を撮ろう【3】規格撮影に必要なカメラシステム
規格性のある口腔内写真を撮ろう【4】口角鈎とピントについて
規格性のある口腔内写真を撮ろう【5】ミラー撮影のコツ・側方面観編
規格性のある口腔内写真を撮ろう【6】ミラー撮影のコツ・咬合面観編

著者須呂剛士

大分県開業

略歴
  • 1994年、九州大学歯学部卒業。
  • 2004年、大分県佐伯市にて、やよい歯科医院開設。
  • 2012年、日本大学松戸歯学部生化学・分子生物学講座にて、歯学博士号取得。

口腔内規格撮影―ミラーの使い方のコツ―
主な著書に『成功例・失敗例で学ぶ 規格性のある口腔内写真撮影講座』、
『箸の文化に適応した、前歯で噛み切れる保険総義歯のススメ(分担執筆)』(いずれもクインテッセンス出版刊)がある。

須呂剛士

tags

関連記事